昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。
メタボやその予備軍であることを指摘されたら、あるいは日頃の運動不足を解消しようと思ったら、最も身近、かつ手軽な運動といえば「ウォーキング」、歩くことだ。日常生活を普通に送っている人であれば、1歩も歩かない日はないだろう。そこへ改めて、「ウォーキングを採り入れてください」と助言されたはいいが、その方法や運動効果については、理解が浅い人も多いかもしれない。
まずは正しい姿勢から
ウォーキングは、全身を使って30分以上続けられる有酸素性運動の中でも代表的なものだ。「1日30分も運動する時間が取れないよ」という人も多いだろうが、毎日でなくてもいいし、10分を3回行う場合と30分を1回行う場合の効果は同じという報告もある。あまり身構えなくても、通勤で1駅分を余分に歩くことができるとしたら、それで運動になるし、持続時間や歩く速度にはあまりこだわらなくてもいい。
ただし、同じ時間をかけるならば、効果を高めたほうがお得だ。慶應義塾大学スポーツ医学総合センター研究員で健康運動指導士の堀澤栞里氏は、「まず大切なのは、正しい姿勢を保つこと」と強調し、その利点を以下のように説明する。
パソコンに向き合ってばかりいる現代人は、猫背になっている人が多い。どうしても体重が前に掛かるので、肩も凝るし腰も痛くなる。堀澤氏は、「まずはまっすぐ立って、顎を軽く引いて少し胸を張るようにする。正しい姿勢で立って、そこから踏み出すことがウォーキングの第一歩」と語る(下図)。
大股や早足で歩けば、それだけエネルギーの消費は上がるが、長続きしなければ意味がない。「速度や歩幅は考えず、まずは上体を起こした正しい姿勢で腕を大きく後ろに振ることを意識する。すると、骨盤の動きが良くなり、自然と歩幅も広がり、一歩が大きく前に踏み出せる」という。
また、歩く時にO脚になっている人や正しい姿勢で歩けていない人の中には、靴のかかとの部分の外側がすり減ってくるケースがある。長期的に見ると膝への負担が増えてくるので、なるべくかかとから着地して親指側で地面を蹴るように意識して歩くと良い。