昭和世代の庶民のヒーローと言えば、寅さんこと車寅次郎。『男はつらいよ』の主題歌にある、「目方で男が売れるなら、こんな苦労もかけまいに♪」というフレーズは、泣けます。
2008年4月に導入された「メタボ健診」では、何とも屈辱的なことに、40~75歳の中高年男女は、有無を言わさず“痛くもない腹”を測られることになりました。男であれ女であれ、その価値は体重やウエストの大小では決められません。が、「内臓脂肪に生活習慣病が重なると、多くの病気が起こる」というメタボリックシンドロームの本質を捉え、適切な対処をしなくてはなりません。

「塩を送る」といえば、戦国時代の美談だ。越後の国の武将・上杉謙信は、海のない甲斐の国の敵将・武田信玄に塩を送らせたという。片や、キリスト教文化では、聖書に「地の塩、世の光」とあるように、塩といえば、掛け替えのない存在の代名詞だ。
太古の時代、原始生物は、塩分が溶け込んでいる海でしか生息できなかった。塩、あるいは食塩の本体は塩化ナトリウム(NaCl)で、体内に入ると、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)に分かれる。ナトリウムは、カリウムやマグネシウムと共に、生命維持にとって必要不可欠なミネラルである。塩分は細胞外液(血液やリンパ液)に溶け込んで、体内水分量と浸透圧の調整という重要な役割を担っている。
健康な人であれば、そう神経質にならずとも、塩を少々取り過ぎたとしても、汗や尿と共に体外に排出される。しかし、日本人には食塩に敏感に反応して血圧が上がりやすい食塩感受性の人が多い(前回記事「塩分を控えれば高血圧にならない…わけではない」参照)。そうした人たちは、塩分を過剰摂取すると排泄機能が追いつかなくなるのが問題だ。高血圧の発症や悪化を予防しようとしたら、まずは減塩が推奨される。加えて、メタボのある人は、減量や適正体重を維持することも必須だし、食べる量が増えれば、塩分も増える。もちろん、節酒も忘れてはいけない。
まだまだ多い日本人の塩、濃い味のおかずに要注意
世界中から“健康食”として注目されている日本食だが、味噌、醤油、漬物…など、塩分の多い保存食・調味料に満ちている。1950年代の東北地方では、1人1日あたりの食塩摂取量(推定値)は25gにも達していた。それは極端な例としても、現代日本人の、1日あたりの食塩摂取量は平均10.4g、男性11.4g、女性9.4gで、なお多い(2011年、国民健康・栄養調査)。一見して、女性のほうが少ないようだが、エネルギー1000 kcal 当たりの平均摂取量で見ると、女性が男性を上回る。これは、主食(米飯)の摂取量が減る一方で、調味された副食(おかず)中心の食事が増えているためとみられている。
日本高血圧学会が推奨する食塩摂取量は1日6g未満で、アメリカの目標値は1日3.8g。成人に必要な食塩は、せいぜい1日2~3gだとされる。高血圧の人は 1gの滅塩で平均して約1mmHg血圧が下がるとされ、 1日11gの食塩を摂っていた人が6g に減らせれば、血圧は5mmHg下がることになる。高血圧の人が1 日6gを目指す場合、1食あたりで換算すると2g以下、高血圧でなくても3gを切らなくてはならない計算になる。