元気に過ごしていた人が、脳梗塞である日突然亡くなってしまう、あるいは半身麻痺になってしまう…こんな話を身近で耳にしたことのある人もいるだろう。循環器専門医で心臓血管研究所所長の山下武志氏は、その原因について「不整脈の一つ、心房細動によるものが増えている」と指摘する。怖いのは、本人が気づかないうちに病気が進んでいく点だ。脳梗塞から要介護状態に陥らないために、「まさか私が」から、「明日はわが身」へと発想の転換をした方がよさそうだ。
心房細動はなぜ増えている? なぜ脳梗塞を引き起こす?
心臓の病気から脳梗塞が起こるというのは、ピンとこない人が多いと思います。なぜ脳梗塞につながるのでしょうか。
山下 脳梗塞といえば、昔は高血圧から起こるものが有名でした。血圧の高い人は、脳梗塞を恐れて血圧をコントロールするようになり、その甲斐あって高血圧による脳梗塞はかなり減りつつあります。ところが、脳梗塞自体は減っていません。なぜかというと、別の原因による脳梗塞が増えている、それが不整脈の一つ、「心房細動」による脳梗塞です。
心房細動は、一定のリズムで拍動するはずの心房が細かく不規則に動くため、心臓の中で血液がよどんで、血の塊(血栓)ができやすくなります。それが血流に乗り、脳の血管を詰まらせて脳梗塞を起こします(図1)。心房細動が原因で起こる脳梗塞は、高血圧によるものよりも重症で、半分以上の方が亡くなるか、半身麻痺で要介護状態に陥ります。リハビリテーションをしてもなかなか元には戻りません。無症状のことも多いため、前日まで元気だった人に、突然起こるというのが怖いところです。誰もが知っている有名人が、ある日突然、心房細動による脳梗塞に倒れたというニュースを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
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