胃酸がこみ上げる、胸がムカムカする、胸が焼けるようにジリジリする…こんな症状の原因となる病気に「逆流性食道炎」がある。一般に「胸焼け」といわれる不快感は、胃酸を多く含む内容物が胃から食道へ逆流することによって起こる。たかが「胸焼け」といえども、放置すると難治化することもあるという。逆流性食道炎の専門家である、四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センター臨床研究管理部部長の関洋介氏に、逆流性食道炎の原因、予防、治療について詳しく聞いた。
胃酸の逆流で食道粘膜に炎症、症状はないことも
逆流性食道炎は、胃酸がこみ上げて、胸焼けのような症状を起こす病気、という解釈で合っていますか。
関 そのようなイメージを持つ人も多いのですが、実際には、逆流性食道炎でも胸焼けなどの自覚症状がない場合もあります。ポイントは、胃酸(胃液)などの内容物が逆流した結果、食道の粘膜がただれ、炎症が起きているということです。自覚症状は、あったりなかったりします。
一方、胸焼けなどの症状があり、逆流は確認できても、内視鏡検査で食道の粘膜に炎症や潰瘍などが見つからない場合は、「非びらん性胃食道逆流症」(Non-Erosive Reflux Disease : NERD)と呼ばれます。両者の共通点は、(1)胃の内容物の食道への逆流があり、(2)「胸焼けなどの自覚症状」と「食道粘膜の炎症」のいずれかまたは両方が認められること、です。この2つをまとめて「胃食道逆流症」(GastroEsophageal Reflux Disease:GERD)といいます(図1)。
胃食道逆流症の症状は、胸がムカムカする、焼けるようにジリジリする、といった症状だけにとどまりません。酸っぱいものが口の中までこみ上げてきたり(呑酸、どんさん)、食後に胸や背中が痛むこともあります。咳が止まらず、喘息かと思っていたら、実は胃食道逆流症が原因の咳であったという事例もあります。まさか胃液の逆流が原因だとは思わず、耳鼻咽喉科や呼吸器内科を受診して、なかなか正しく診断されないということも少なくありません(表1)。

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