中高年になると全身あちらこちらに出てくる、関節の悩み。特に更年期以降の女性に多いのが、手指の痛み、しびれ、起床時のこわばりとともに指が変形する、手の変形性関節症だ。この病気は、長い時間をかけて関節の変形が進むにもかかわらず、「年のせいだろう」「手の使いすぎだろう」と考えて、適切な治療を受けていない人が多い。手の変形性関節症はなぜ起こるのか、治療・予防の方法にはどんなものがあるのか、四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター長の平瀬雄一氏に聞いた。

手の変形性関節症は、痛みやしびれ、起床時のこわばりから始まる
平瀬 手の変形性関節症は、症状がある場所によって名称が異なり、一番多いのが、指の第1関節に起こる「へバーデン結節」です(*1)。これに第2関節の「ブシャール結節」、親指の根元の関節に起こる「母指CM関節症」を合わせた3つが、代表的な手の変形性関節症です(図1)。そのほかに更年期に多いのは、手のしびれを起こす「手根管症候群」、指の曲げ伸ばしが困難になる「ばね指」、親指側の手首が腫れて痛む「母指ドケルバン病」などです。

いずれも手の痛みやしびれ、こわばりから始まります。関節が変形するのは、最初の指のこわばりを感じてから7~10年後のことです。よくあるのは、初期症状に気づき、関節リウマチを疑って受診するパターンです。しかし、関節リウマチと違い、変形性関節症は血液検査で異常がなく(*2)、初期のうちはX線検査でも関節の変形が確認できません。そのため、「関節リウマチではなくて良かった」「年齢のせいだろう、使いすぎだから仕方ない」と我慢して過ごす人が多く見られます。
しかし、変形性関節症をそのまま放置すると、多くの場合は軟骨がすり減って関節の隙間がなくなり、骨同士がぶつかって削れ、変形は次第に進んでいきます。
手関節の変形は「年のせい」「手の使いすぎ」だと思われがちですが、実際にそうとは限らないのでしょうか。どんな人が発症しやすいのですか。
平瀬 受診者数のほとんどは更年期、あるいはそれ以降の女性です。男性にも手の変形は起こりますが、女性ほど痛みが出にくいので受診する人は少数です。
女性の中でも若い人の発症はまれで、かといって80代、90代の高齢女性にも多くないため、必ずしも加齢とともに増えるとは言えません。また、手の変形性関節症は、左手の薬指から始まることもありますが、この指だけをよく使う人はいません。つまり、手の使いすぎで起こるとも限らないわけです。
手の変形性関節症の真の原因は、女性ホルモンの1つ、エストロゲン分泌量の急激な低下だと最近は考えられています。
*2 関節リウマチで第1関節に症状が現れることはほとんどないため、1カ所でも第1関節に症状があり、ヘバーデン結節が疑われれば関節リウマチはほぼ否定される。他の関節の場合は、血液検査で関節リウマチに特異的な項目(抗CCP抗体など)の数値が高ければ関節リウマチと診断される。