「血液のがん」といえば白血病が有名だが、実は白血病より患者が多いのが「悪性リンパ腫」だ。悪性リンパ腫は中高年に多く、70種以上のタイプが存在するという。そのため、検査でタイプや悪性度をしっかり把握し、それに沿った治療を進めることが重要となる。悪性リンパ腫の治療の現状について、埼玉医科大学総合医療センター血液内科教授・診療部長の木崎昌弘氏に聞いた。
血液がんの1つ、悪性リンパ腫は50~60代から増え始める
悪性リンパ腫はどのような病気なのでしょうか。
木崎 「血液のがん」と呼ばれる造血器腫瘍には、悪性リンパ腫と白血病、多発性骨髄腫の3つがあります。この中で日本人に最も多いのが悪性リンパ腫です。悪性リンパ腫は、骨髄で作られる血液細胞(赤血球、白血球、血小板)のうち、白血球の一種であるリンパ球ががん化して起こります(図1)。
悪性リンパ腫は、特徴的な細胞が見られる「ホジキンリンパ腫」と、それ以外を指す「非ホジキンリンパ腫」に分けられ、日本では非ホジキンリンパ腫が約9割を占めています(表1)。細かな病型で見ると70種以上のタイプ(病型)があり、それによって進行が速いかどうか、つまり悪性度がかなり違います。年単位でゆっくり進むものもあれば、月単位、もっといえば週単位で進むタイプもまれに見られます。
非ホジキンリンパ腫 (約9割) |
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ホジキンリンパ腫 (約1割) |
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年齢に関しては、悪性リンパ腫になりやすいのは中高年以降です。ただし、非ホジキンリンパ腫が50~60代以降に多いのに対し、ホジキンリンパ腫は20代で発症する人もいます。
リンパ球ががん化する原因は何なのでしょうか。
木崎 多くのがんと同様に、リンパ球のがん化も何らかの原因で遺伝子異常が生じて起こることは分かっていますが、まだ解明されていないことが多くあります。
分かっている原因の例を挙げると、膠原病のシェーグレン症候群や、甲状腺疾患である橋本病など、免疫機能が下がるような病気があると悪性リンパ腫が発生しやすいと言われます。 また、関節リウマチの治療に用いる、メトトレキサートという免疫抑制剤から引き起こされることもあります。
ウイルス感染も大きなファクターです。EBウイルス(*1)やC型肝炎ウイルスなどに感染した人は悪性リンパ腫になりやすいことが分かっています。また、西日本に多い成人T細胞白血病/リンパ腫は、HTLV-1ウイルスの感染によって引き起こされます。細菌感染も同様で、胃がんの原因として知られるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染すれば、胃のMALTリンパ腫が発生しやすくなります。
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