最近では、糖尿病患者に糖質を制限した食生活を勧める医師が増えている。しかし、あれもダメ、これもダメ、と厳格に糖質を制限する食生活は、苦行となって続かないことも多いだろう。長続きさせるコツについて、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授・診療副部長の西村理明氏は、「難しいことに無理にトライするより、まずは食べる順序を変えることから始めてみては」と勧める。食事や運動をどう工夫すれば血糖値が改善するのかについて、前編に引き続き西村氏に聞いていく(本記事では、糖尿病患者の多数を占める2型糖尿病について取り上げます)。
「ベジタブルファースト」で食後の血糖値を上げない努力を
前編では、血糖値が食後に上昇する血糖値スパイクが危険だとお聞きしました。これを防ぐために、糖質のとり方について患者さんにどう指導しているのですか。

西村 血糖値を上げないために、食事からとる糖質の量を厳格に制限するよう指導する医師もいますが、私はあまりお勧めしていません。糖質を制限するよりも、食べる順序を意識することの方が大切ですし、長続きすると考えているからです。
私たちの脳は、糖を栄養として機能しています。そのため、糖を摂取しないと、頭が回らなくなったり、だるくなったりします。食べるときは野菜を一番に、それから他のおかず、最後にご飯を食べるという「ベジタブルファースト」が効果的です。血糖値を上げやすいものはできるだけ食事の最後にして、どうしてもご飯も一緒に食べたいなら、野菜と交互に食べるようにします。
食べる順序を変えるだけで、そんなに血糖値に差が出るのでしょうか。効果が表れるまで、どのくらいの時間がかかりますか。
西村 ベジタブルファーストを実践すれば、図1の通り、効果はすぐに表れます。野菜を先に食べると、野菜に含まれる食物繊維の作用で、後から食べる糖質の吸収されるスピードがゆっくりになります。これにより、食後の血糖値が急上昇しなくなるのです。食後に血糖値が上がりやすかった人も、食べる順序を変えるだけで数値が下がり始めます。
食後の血糖値のピークは食べ始めてから1~2時間で見られるので、この時間内に運動を組み合わせるといいでしょう。ランチは、野菜メニューの多い飲食店に行って、30分くらいかけて食べて、また歩いて職場に戻る、という流れがベストです。せっかく外に出るなら、少し遠めのお店まで歩いて往復するといいでしょう。夕食後にも散歩くらいできればいいのですが、時間が取れなければ炭水化物は朝食・昼食だけにして、夕食では抜くという方法でも構いません。