腎臓は、肝臓や膵臓と並ぶ「沈黙の臓器」の1つ。腎機能がゆっくりと低下する「慢性腎臓病」は、初めての受診でいきなり腎不全と診断される人もいるほど、自覚症状に乏しいのが特徴だ。悪化して透析療法を始めると、治療は生涯にわたるため、そうなる前に回避することが重要となってくる。腎臓の異変に気づくために健診結果の何に着目すればいいか、そして診断・治療の最新事情について、東京逓信病院腎臓内科主任医長の高野秀樹氏に聞いた。
腎臓は、一度障害を受けると元に戻すのは難しい
腎臓は2つのソラマメのような形の臓器として知られますが、どんな機能を担うのでしょうか。
高野 腎臓は、握りこぶし大で、腰の少し上(横隔膜の下)の背中側に、背骨を挟んで左右1つずつある臓器です(図1)。水や血液中の老廃物をろ過して尿から出すだけの臓器と思われやすいのですが、ほかにも大切な役割があります。腎臓は体内のイオンバランスや血圧を調整し、血液や骨を作る機能も助けていて、体の恒常性をつかさどる最後の砦のような存在です。
慢性腎臓病とは、この腎臓の機能がゆっくりと低下していくさまざまな病気の総称です。つまり、もとの疾患は何でもよく、常に腎臓が障害を受けているという証明です。患者数は1330万人(*1)、成人の8人に1人という大変な数です。進行すると腎不全をきたし、透析療法で腎機能を肩代わりしないと生命を維持するのが困難になってきます(透析療法の詳細は後編で解説)。腎臓は一旦障害を受けると、元に戻すのは非常に難しい臓器の1つです。このため、早期発見・診断が重要になります。
慢性腎臓病の定義を教えてください。
高野 慢性腎臓病とは、(1)腎臓の障害がある(尿たんぱくが出るなど)、(2)腎臓のろ過機能が低下している、の2つのうち、片方あるいは両方が3カ月以上続くものをいいます(図2)。
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