突然、目の前がぐるぐる回転する。自分がふわふわ浮いているように感じて、よろめいて座り込む…。厚生労働省の国民生活基礎調査(平成25年)によると、めまいを訴える人の数は、約240万人に上り、近年増加傾向にある。一言で「めまい」と言っても原因はさまざま。めまいが起こるメカニズムや最前線の治療について、奈良県立医科大学附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の山中敏彰医師に聞いた。
めまいは先進国に多い「文明病」
近年、めまいはなぜ増えているのでしょうか。

山中 めまいは先進国に多い病気で、「文明病」ともいわれています。原因としてよく言われるのは、現代社会における過度の「ストレス」です。絶えず変化する複雑な社会構造の中で競争を余儀なくされることによってストレスも増え、めまいも増えているのだと考えられます。
もうひとつの原因としては高齢化が挙げられます。加齢により動脈硬化が進み、脳循環や神経機能、筋・骨格系運動機能も衰えてきます。それによってふらついたり、めまいを起こしたりするのですが、これを「異常」ととるのか「加齢による自然現象」ととるのかは難しいところです。いずれにしても高齢化が進めば、めまいを訴える人が増えてくるのは事実です。欧米や国内の疫学調査(*1)によると、65歳以上で大体25%がめまいを感じたことがあるといいます。
めまいのメカニズムを詳しく教えてください。
山中 人間の平衡感覚、つまりバランスを感じる感覚には大きく3つあって、一番大きい役割を果たすのが内耳にある「前庭(三半規管と耳石器)覚」、次に「視覚」、それから、関節や筋肉、靱帯、腱の動きによって生じる感覚である、「体性(深部)感覚」があります。
通常、これらの3つの感覚からの平衡情報は脳に入って統合されるのですが、その組み立てがミスマッチだった場合にバランス調節機能が乱れます。このバランス調節機能の乱れを脊髄とか脳幹や小脳レベルで感じると「身体のよろめき(倒れそう)」になるのですが、それを大脳で感じると「めまい(目が回るようなくらくらとした感覚、物が揺れ動いて見える)」になります。めまいは自分が動いていないのに周りが動いているとか、自分の中が動いているように感じます。