糖尿病の合併症の1つである「糖尿病網膜症」は、日本における中途失明原因の第3位にあたる重大な眼疾患とされる。早期から症状が出ることは少なく、急に悪化してから気づくことが多い病気だ。糖尿病網膜症が進行していく過程や治療方法、早期発見のためにできることについて、関西医科大学附属病院眼科診療部長・主任教授の髙橋寛二氏に聞いた。

高血糖が続くと眼底の網膜の毛細血管が障害され、異常が現れる
生活習慣病の1つである糖尿病から、なぜ網膜の病気が起こるのでしょうか。
髙橋 糖尿病では、血液中の糖(血糖)が過剰になり、全身の細い血管が傷ついたり詰まったりして、眼や腎臓、神経などのさまざまな臓器に重大な合併症を引き起こします(3大合併症)。そのうちの1つが糖尿病網膜症です。網膜に影響が及ぶのは、網膜は毛細血管が豊富に張り巡らされている場所だからです。
糖尿病患者のうち、どのくらいの人が糖尿病網膜症を持っているのでしょうか。
髙橋 日本の糖尿病患者で糖尿病網膜症を持つ人の割合は3.98%とされ、10%に届かない程度です(*1)。
しかし、日本における中途失明の原因のうち、糖尿病網膜症は緑内障、網膜色素変性に次ぐ第3位にあたります(図1)。毛細血管が傷むと血管に瘤や閉塞が起こり、網膜の血の巡りが低下することによって、異常な血管が発生し、重症になると最終的には失明する場合もあります。糖尿病網膜症は初期に気づくことは少なく、自覚症状が現れるのはかなり進んでから、というのも怖いところです。進行度によって、両目にさまざまな症状が現れるようになります。
