加齢が引き起こす目の病気といえば白内障や緑内障が有名だが、忘れてはならないのが「加齢黄斑変性」だ。加齢黄斑変性は、網膜の中心部(黄斑)が傷み、視野の中央という、最も日常生活に影響する部分が見えにくくなる病気。近年は薬物療法を中心に治療が進化し、新薬も続々と開発されているという。加齢黄斑変性を発見・予防するポイントや診断・治療の現状について、関西医科大学附属病院眼科診療部長・主任教授の髙橋寛二氏に聞いた。
網膜の「黄斑」に不要な血管が発生し、血液などが漏れ出す
加齢黄斑変性はどのような仕組みで起こる病気なのでしょうか。
髙橋 加齢黄斑変性には2つのタイプがありますが、そのうち約9割を占める「滲出(しんしゅつ)型」についてまずご説明します(表1)。
滲出型 |
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萎縮型 |
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目の奥には、目に入る映像を映す網膜があり、その中心に「黄斑」という場所があります。黄斑には視力をつかさどる視細胞が集まっていて、物の大きさや形、色など、多くの情報を識別する重要な役割を担っています。
高齢になると、網膜や、その役割を助ける細胞(網膜色素上皮細胞)が老化し、疲弊します。代謝が活発な黄斑は、常に光の焦点を合わせるという激務に耐えるうちに傷み、脂質などの老廃物がたまりやすくなります。すると、そこに弱い炎症が起こり、炎症細胞が遊走(注:細胞などが生体内の別の場所に移動すること)します。
炎症細胞は「VEGF(血管内皮増殖因子)」という物質を出し、網膜の奥にある脈絡膜から未成熟な血管が生えるように促します。この新生血管はもろいので、容易に出血し、また血液中の液体成分が漏れ出てしまい(滲出)、本来はくぼんでいる黄斑が新生血管や滲出で腫れたように盛り上がってきます。こうして起こるのが滲出型の加齢黄斑変性です(図1)。
それに対し、加齢によって黄斑の視細胞や網膜色素上皮細胞が傷み、萎縮して機能が落ちたり、視細胞が減少するのが「萎縮型」です。こちらは約1割と頻度は高くありません。
加齢以外にも、加齢黄斑変性を起こす原因はあるのですか。
髙橋 病名の通り、加齢黄斑変性を起こす一番の原因は加齢です。加齢に次ぐリスクファクターがタバコです。この病気は女性よりも男性に多いのですが、そこにはわが国の男性の喫煙率の高さが影響しています。またタバコの影響は禁煙しても長く続くとされています。
そのほか、食事などの生活習慣も関係すると言われています。欧米では肥満の人など、脂肪分に富む肉類をよく食べる人や、不健康なライフスタイルの人に多い傾向があります。