日本の約206万人がわずらう脂質異常症(厚生労働省平成26年「患者調査の概況」)。偏った食事や運動不足などを原因とすることが多く、放置すれば動脈硬化から狭心症や脳梗塞を引き起こし、突然死に至りかねない。しかも自覚症状がないのが怖いところだ。まさかの事態が起こる前に、生活をどう改善すればいいのか、薬物療法はどのように進められるのか、帝京大学理事・名誉教授で同大学臨床研究センターセンター長の寺本民生氏に聞いた。
LDLは過剰になると動脈の壁に入り込む、HDLはそれを引き抜く
コレステロールには悪玉と善玉があるといいますが、どのような仕組みで脂質異常症が起きるのでしょうか。
寺本 コレステロールは脂質の一種で、人間の体の中で細胞膜や胆汁酸(消化液)、副腎皮質ホルモンや性ホルモン(男性ホルモン、女性ホルモンなど)の原料となります。つまり、人体を維持するのに欠かせない物質です。コレステロールには、悪玉のLDLコレステロール(以下、LDL)と善玉のHDLコレステロール(以下、HDL)があります。
コレステロールの7~8割は、体内で合成されています。このうち悪玉のLDLは肝臓で作られ、血流により全身に送られて有効利用されていますが、過剰になると血中に溜まってしまいます。そうなると、行き場がないLDLは動脈の壁に入り込むしかありません。これが動脈硬化の原因となります(下図)。
一方、善玉のHDLは小腸などで作られ、動脈に溜まったLDLを引き抜いて肝臓に回収する役割を果たします。動脈硬化においては、LDLが高すぎること、HDLが低すぎることのいずれもが問題になります。
また、脂質の1つである中性脂肪も、増えると肥満や脂肪肝の原因となり、動脈硬化を引き起こすので注意が必要です。
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