著名人が闘病を公表したり、医師や患者会による啓発活動が進んだりしたことから、急速に認知度が上がっている「乾癬(かんせん)」。うろこがはがれるような皮膚症状で知られるが、実はただの皮膚病ではない。脂質異常症やメタボリックシンドローム、糖尿病、心筋梗塞とも関係があり、寿命を縮めることもある病気だ。乾癬の症状や治療の現状について、東京大学医学部皮膚科・講師 乾癬センター長の吉崎歩氏に聞いた。
乾癬は寿命を縮めかねない、全身性の炎症性疾患
乾癬とはどのような症状が現れる病気なのでしょうか。
吉崎 乾癬にはいくつかのタイプがありますが、大部分を占めるのは「尋常性乾癬」です(表1)。今回は尋常性乾癬(以下、乾癬)についてお話ししましょう。
尋常性乾癬 | 皮膚が刺激を受けやすい場所に、鱗屑(りんせつ)や紅斑などが現れる。乾癬の大部分を占める(症状については表2を参照) |
乾癬性関節炎 | 皮疹に加えて炎症性の関節炎が起こる。尋常性乾癬から生じることもある |
滴状乾癬 | 水滴状の小さな紅斑が全身に現れる。風邪などの感染症に続いて起こることが多く、若年者に多い |
乾癬性紅皮症 | 皮膚の8~9割が紅斑で覆われる。尋常性乾癬が重症になったものを指すと考えられている |
膿疱性乾癬 | 膿を含む水膨れ(膿疱)ができ、それが破れると体液が漏れて低たんぱく血症となり、全身状態が悪化する場合がある |
乾癬は鱗屑(りんせつ)や紅斑(こうはん)が現れる皮膚の病気です。鱗屑は皮膚のアカの部分、つまり古い角質がうろこのように積み重なること、紅斑は皮膚が炎症を起こして赤く盛り上がることを言います。何らかの原因で皮膚の新陳代謝が過剰になるために角質が重なり、鱗屑や紅斑、かゆみなどの症状が現れるようになります(表2)。遺伝の影響もあるとされますが、なぜこのような症状を起こすのかは、はっきりとは分かっていません。
鱗屑 (りんせつ) |
皮膚の表面に古い角質がカサカサとうろこのように重なる状態。鱗屑がはがれ落ちることを落屑(らくせつ)と言う |
紅斑 | 境界線がはっきりした皮疹が赤く盛り上がる。かゆみを伴うことが多い |
その他 | 関節痛や爪の変形などが見られることもある |

乾癬は皮膚科における代表的な炎症性疾患ですが、ただの皮膚病ではありません。全身に炎症をきたす病気であるため、関節炎やぶどう膜炎(*1)を合併したり、脂質異常症(高コレステロール血症など)や糖尿病のような代謝性疾患やメタボリックシンドローム、肥満、心臓・血管系の病気、うつ病などにも関係があると言われています。