γ-GTPなどの肝機能の検査値が高いとき、肝臓の病気を疑うことはあっても、「胆道の病気かもしれない」と思う人はほとんどいないのではないだろうか。それほど、胆道はわれわれにとってなじみの少ない臓器の1つだ。その胆道に発生する胆道がんは、膵臓がんに次いで生存率が低く、手術も難しいがんだという。胆道がんの特徴や症状の出方、早期発見と治療のポイントについて、順天堂大学医学部附属順天堂医院肝・胆・膵外科教授の齋浦明夫氏に聞いた。
胆道がんは胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんの総称
胃腸や肝臓と違って胆道はなじみの少ない臓器ですが、どんな臓器なのですか。
齋浦 胆道とは、脂肪の消化を促す消化液である、「胆汁」の通り道のことを言います(図1)。胆汁は肝臓で作られた後、「胆管」を通って「胆のう」に運ばれ、そこで濃縮・蓄積されています。さらに胆管は膵臓を貫くように走り、十二指腸につながっています。この胆管と胆のうの総称が胆道であり、そこにできるのが胆道がんです。
胆道がんにはどのような種類があるのでしょうか。
齋浦 大きく分けると、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんの3つがあります(図2)。特に頻度が高いのが胆管がんと胆のうがんで、胆管がんのほうがやや多い状況です。2021年現在、日本人の罹患数は胆道がん全体で約2万3400人とされています(*1)。

胆管がん
肝内胆管がん…肝臓の中を通る部分の胆管のがん。無症状で進むことが多い
肝外胆管がん…肝臓の外を通る胆管にできるがん
肝門部領域胆管がん…肝臓の動脈や門脈などがある場所なので、手術が難しい
遠位胆管がん…胆管の出口手前にできる。膵臓を通るため膵臓にも広がりやすい
胆のうがん
胆のうにできるがん。症状は出にくいが、早期なら丸ごと切除して治癒することが多い
十二指腸乳頭部がん
胆管の末端で、十二指腸乳頭部に接する部分にできる。胃カメラで見つかりやすい
胆管がんは、場所によってさらに細かく分類されます。女優の川島なお美さんが闘病したことで知られる「肝内胆管がん」は、肝臓の中を通る胆管にできるがんです。一方、肝臓の外にある胆管にできる「肝外胆管がん」には、動脈や門脈などの近くにできるタイプ(肝門部領域胆管がん)や、胆管の出口手前にできる「遠位胆管がん」があります。
そのほか、胆管の出口(十二指腸乳頭部)にできる「十二指腸乳頭部がん」や、胆のうにできる「胆のうがん」もあります。