中高年男性の外見を著しく損ねる「薄毛」。薬を飲めば、進行を食い止められる時代になって10年余り、2016年6月には新たな飲み薬「デュタステリド」(商品名ザガーロ)も発売された。脱毛症に詳しい横浜労災病院皮膚科部長の齊藤典充氏に、男性型脱毛症(AGA)治療を取り巻く現状や新薬の特徴について聞いた。
男性型脱毛症治療の基本は「現状維持」
男性は、年を重ねるごとに薄毛が気になり始めます。男性型脱毛症はなぜ起こるのでしょうか。

齊藤 生活習慣の影響もあるといわれますが、男性型脱毛症(以下AGA)の原因はあくまでも体質です。その人が持って生まれた遺伝的要素が原因で発症します。
AGAの発症には、男性ホルモンの1つであるテストステロンと、5α還元酵素が深く関わっています。5α還元酵素は体内に存在する酵素の1つで、テストステロンをさらに強力なジヒドロテストステロンに変化させる作用があります。ジヒドロテストステロンは毛髪の元となる毛母細胞の働きを低下させ、太い毛ではなく産毛が生えるようになって、徐々に薄毛が進行します。これは加齢に伴って誰にでも起こる現象ですが、生じやすいかどうかは、その人の体質次第です。
少し薄いくらいで病院に行っていいのか、かといって、毛がなくなってからでは手遅れなのか…受診のタイミングが難しいところです。
齊藤 いつから薄毛が目立ち始めたかによりますが、発症から受診までの期間は短いに越したことはありません。
AGAは放っておくとどんどん進むのが特徴で、今ある薬は現状を維持するのが基本です。それ以上進まないように歯止めをかけるだけでも効果あり、なのです。ですから、完全に毛がなくなった人が維持しようにも、難しいものがあります。薄毛が気になってきたら、早めの受診をお勧めします。
最近発売された新しい飲み薬の効果はいかがですか。
齊藤 2016年6月に発売されたデュタステリド(商品名ザガーロ)ですね。発売元の製薬会社(グラクソ・スミスクライン)によると、ジヒドロテストステロンの濃度が下がって毛が太くなるなど、良い効果があるといいます。