だるい、寝ても疲れがとれない、階段を上ると息切れがする…。単なる過労や夏バテと思われがちなこうした症状は、もしかしたら鉄欠乏性貧血かもしれない。女性に多いイメージのある貧血だが、実は男性にとっても人ごとではない病気。気づかれにくい貧血の症状と、治療や食生活のポイントについて、ナビタスクリニック新宿院長の濱木珠恵氏に聞いた。

鉄が不足することで全身が「酸欠状態」に陥る
貧血とはどういった状態ですか。体の中で何が起こっているのですか。
濱木 貧血とは、血液中の赤血球の量や、ヘモグロビン(酸素を全身に運ぶ赤血球中のたんぱく質)が不足した状態をいいます。貧血はその原因によってさまざまな種類に分けられますが、中でも一番多いのが、鉄が不足することで起こる鉄欠乏性貧血です。
鉄が不足すると、なぜ貧血になるのでしょうか。
濱木 ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割を担うたんぱく質で、鉄は材料として使われます。鉄が不足すればヘモグロビンがうまく作られなくなるので、運ばれる酸素が減り、全身の細胞が酸欠になってしまうのです。
鉄不足は、食事からの鉄分摂取が足りない、体が必要とする鉄分量が多い、失う鉄分量が多いなど、さまざまな要因で起こります(表1)。成人女性なら月経による出血が大きく影響しますが、男性や閉経後の女性にも鉄欠乏性貧血は見られます。