ある日突然起こり、重大な後遺症が残りうる脳梗塞。日本では毎年7万人近い人が亡くなり、助かっても寝たきりになることも多い病気です。最悪の事態を回避する鉄則は、「早く治療を受けること」。血栓を溶かす夢の新薬といわれたt-PA(組織プラスミノーゲンアクティベータ)の認可から10年。脳梗塞治療の現状について、順天堂大学医学部附属浦安病院脳神経・脳卒中センター長の卜部貴夫(うらべたかお)氏に話を聞きました。
脳梗塞は「何の症状もない人に、ある日突然起こる」
脳梗塞とはどのような病気でしょうか。
卜部 脳に突然起こる代表的な病気として、脳卒中があります。脳卒中は、脳の血管が破れる、あるいは詰まることにより、その部分の脳の働きが失われてしまう病気の総称で、血管が破れるタイプが脳出血やくも膜下出血、血管が詰まるタイプが脳梗塞です。脳梗塞はさらに、3つの型に分けられます(下図)。
ポイントは、今まで何もなかったのに、ある日突然に起こること。代表的な症状は、体の半分が動かなくなる、手足がしびれる、ろれつが回らない、人の話を理解できない、視界の半分が見えなくなる、などです。
どのような人が脳梗塞になりやすいのでしょうか。
卜部 年齢で言えば、70歳以降の人、つまり加齢とともに起こりやすい病気です。中でも、脳梗塞の一番の危険因子は高血圧です。高血圧をわずらっている期間が長い人は、特にラクナ梗塞を起こす可能性が高くなります。高血圧以外に、悪玉(LDL)コレステロールが多い、糖尿病、喫煙、過度のアルコール摂取なども脳梗塞のリスクを高める要素です。
脳梗塞が起こりやすい季節はありますか。
卜部 比較的よく起こるのは、夏と冬です。夏場は水分不足による脱水症状が影響しますが、冬の寒い時期は血圧が急激に上昇して起こります。動脈硬化が進むと、特に夏は脱水で血がドロドロになって血管が詰まりやすくなります。不整脈がある場合も、水分不足で血栓ができて脳梗塞を起こしやすくなり、注意が必要です。
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