大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症が起こり、長期にわたって下痢や腹痛などの症状を繰り返す炎症性腸疾患。その代表例であるクローン病は、同じ炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎と比べて症状が多彩で、治療の選択もタイプによって大きく異なる。若年世代に患者が急増しているクローン病の診断と治療の最新情報について、前編に引き続き東京医科歯科大学大学院・消化器病態学教授で潰瘍性大腸炎・クローン病先端医療センター(IBDセンター)センター長の岡本隆一氏に聞いた。
クローン病の症状は多彩 肛門病変、腸管の狭窄、発熱なども
後編では、炎症性腸疾患のうち主にクローン病について聞いていきます。まずはクローン病を発症する人の傾向について教えてください。
岡本氏(以下敬称略) 潰瘍性大腸炎の患者さんの多くは30歳~40歳ごろまでに発症するのに対し、クローン病はさらに若く、10代後半から20代の若い世代で発症する傾向があります。男女の比率は約2対1で、男性の方が多くなっています(図1)。

岡本 潰瘍性大腸炎で炎症やただれ(潰瘍)が起こる部位は大腸に限られていますが、クローン病の場合は、口から肛門までの消化管のどの部分にも炎症や潰瘍が生じる可能性があります。とはいえ、主に生じる場所は小腸と大腸です。小腸だけに炎症が見られる場合は「小腸型」、小腸と大腸の両方に炎症が起こっている場合は「小腸・大腸型」、大腸に限られる場合は「大腸型」と呼ばれます。
