国の指定難病の中でも患者数が多い「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は、大腸や小腸の炎症により、腹痛や下痢、血便などの症状を繰り返す慢性疾患で、発症すると長期的な治療が必要になる。しかし、近年は治療薬の選択肢が広がり、症状のコントロールが可能になってきているという。東京医科歯科大学大学院・消化器病態学教授で、潰瘍性大腸炎・クローン病先端医療センター(IBDセンター)センター長の岡本隆一氏に、この2つの病気の特徴や治療法について2回に分けて聞いていく。

指定難病の潰瘍性大腸炎、推定患者数は約22万人
潰瘍性大腸炎とクローン病はどのような病気なのでしょうか。
岡本氏(以下敬称略) 腸に原因不明の慢性炎症を起こす病気を炎症性腸疾患と呼びますが、その主なものが「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」です。いずれも1970年代に国の特定疾患(現在の指定難病)に指定され、90年ごろから患者数が急増しています。
令和2年度(2020年度)の患者数(医療受給者証の交付件数)は、潰瘍性大腸炎が約14万人、クローン病が約4万8000人となっています(図1)。ただし、軽症患者を含めた実際の患者数はさらに多いと推定されており、2015年から2016年にかけて実施された全国疫学調査(*1)では、潰瘍性大腸炎が約22万人、クローン病が約7万人と報告されています。