高温多湿な季節になると、「足白癬」、いわゆる水虫に悩む人が増えてくる。水虫は治りにくく再発しやすいというイメージがあるが、実際は、薬の使い方やセルフケアに問題がある場合が少なくない。人とうまく共存しながら寄生する白癬菌の特性を踏まえ、薬の適切な使い方やセルフケアに関する「OK」と「NG」について、神奈川はた皮膚科クリニック院長の畑康樹氏に聞いた。
水虫の中で意外と多いのが、「かゆくない」タイプ
足白癬、いわゆる水虫はどのような病気なのでしょうか。
畑 水虫(足白癬)は、カビ(真菌)の一種である「白癬菌」に感染して起こる病気です。白癬菌は足の皮膚に付着して角質に入り込み、そこに含まれるたんぱく質のケラチンをエサにして生き延びます。水虫には、指と指の間の皮がむける「趾間型(しかんがた)」、足の裏に小さな水ぶくれができる「小水疱型」、足の裏全体の皮が厚くなる「角質増殖型」という3つの型があり(図1)、複数の型が混在することもあります。

白癬菌は、足の爪に入り込む「爪水虫(爪白癬)」を起こすこともありますが、その場合も、同時に水虫(足白癬)も起こしているケースがほとんどです。また、頻度は少ないですが、白癬菌は上半身の皮膚に感染することもあります。
白癬菌はどんな性質の菌なのでしょうか。
畑 白癬菌は1つの菌だけを指すわけではなく、さまざまな種類があります。最も多い菌、トリコフィトン・ルブルムは人に寄生しやすいように進化した菌です。そのため、水虫を持つ人の角質の中には、冬でも白癬菌が潜んでいます。水虫に悩む人が増えるのは初夏から秋ですが、菌が活動的になって症状が出やすいのが高温多湿な時期というだけです。夏に悪化しないよう、症状が軽い冬のうちにしっかり治療することが大切です。
感染源となるのは、バスマットなど、菌が付着しやすく、なおかつ複数の人が踏む場所です。ただし、足に菌が付着するだけで感染が成立するわけではなく、菌が角質の中に侵入して感染するまでには約48時間かかります。共同浴場やジムなどで白癬菌のついたマットを踏んでしまっても、家に帰って足をきれいに洗えば菌は落ちます。しかし、白癬菌を持つ人と日常的にバスマットなどを共有すれば、せっかく足を洗っても再び菌を踏み、感染する可能性が高くなります。
なお、「水虫はかゆい」というイメージを持っている人が多いのですが、実際にかゆみが出るのは水虫の患者さんの半数程度です。かゆみの有無は菌の種類によって多少異なり、かゆみを生じる菌ももちろんありますが、一番多い菌ではかゆみなどの自覚症状があまり出ません。それだけ人とうまく共存できる術を身につけている菌だと言えます。