俳優の夏目雅子さん(故人)、渡辺謙さん、歌舞伎役者の十二代目市川團十郎さん(故人)、競泳選手の池江璃花子さんなど、白血病にかかった著名人は少なくない。白血病は昔から「不治の病」というイメージが強いが、近年は新薬が多く開発され、移植治療も進化し、社会復帰する人も増えている。そこで今回から2回にわたって、白血病治療の最新情報を、東京都立駒込病院血液内科医長の垣花和彦氏に聞いていく。前編となる今回は、白血病のなりたちと、急性白血病の診断・治療にフォーカスする。
日本の白血病は急性白血病が多く、成人では骨髄性が多い
「血液のがん」とも呼ばれる白血病は、どのような仕組みで起こるのでしょうか。
垣花 骨の中にある骨髄には血液を作り出す「造血幹細胞」があり、さまざまな形に分化して赤血球や血小板、白血球などの血液細胞(血球)になっていきます(図1)。その過程で、何らかの原因で遺伝子異常が起こり、がん化した血液細胞が増えてしまうのが白血病です。

白血病は、急性と慢性に分けられ、がん化している細胞の系列によってそれぞれ骨髄性とリンパ性に分類されます(表1)。急性は、分化が停止し、未熟な血液細胞(白血病細胞)が急速に増殖するのに対し、慢性は、初期には分化する能力が保たれているため、さまざまな段階の白血病細胞がゆっくり増殖するのが特徴です。日本における急性白血病と慢性白血病の比はおよそ4:1と急性が多く、急性のうち、成人では骨髄性、小児や若い人ではリンパ性が多く見られます。
急性白血病 白血病細胞が急激に増える。かぜに似た症状で受診して分かることが多い |
慢性白血病 白血病細胞がゆっくり増える。健康診断で偶然発見されることが多い |
急性骨髄性白血病
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慢性骨髄性白血病
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急性リンパ性白血病
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慢性リンパ性白血病
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通常、多くの病気では急性期(症状が急激に現れる時期)を経て慢性期(症状は比較的安定し、長期的な治療を必要とする時期)に向かいますが、白血病の場合、急性白血病と慢性白血病は別の病気だと考えてください。急性白血病が慢性白血病に移行することはありません(*1)。