長瀬 下の表の通り、使用される薬はさまざまです。最近では、副交感神経を抑制する長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と、交感神経を刺激する長時間作用性β2刺激薬(LABA)の2つを合わせた配合薬もよく使われます。
長時間作用性抗コリン薬(LAMA)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬 | ウルティブロ、アノーロ、スピオルト |
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長時間作用性β2刺激薬(LABA)・吸入ステロイド薬の配合薬 | アドエア、シムビコート、レルベア |
テオフィリン徐放薬 | テオドール、テオロング、ユニフィル |
喀痰調整薬 | ビソルボン、ムコダイン、クリアナール、ムコソルバン、スペリア |
重症になったら、治療法は変わってくるのですか。
長瀬 COPDの患者さんは、風邪などをきっかけに急激に症状が悪化する(急性増悪)ことがあります。急性増悪が起きると呼吸困難を起こし、最悪の場合、死に至りかねません。そのため、インフルエンザや肺炎球菌のワクチンを適切な時期に済ませておき、急性増悪のきっかけとなりやすい感染症を防ぐ必要があります。
重症度が上がり、症状の悪化を繰り返す場合は、吸入ステロイドも使います。外科治療を行うこともあります。肺気腫が進んでうまく換気できなくなった部分を取り除き、残る部分が機能しやすいように容積を増やす治療です。ただ、外科治療を行っても劇的に治るわけではないので、最近はあまり行われなくなっています。そのほか、呼吸不全が進行し、自然呼吸だけでは酸素を十分に取り込めなくなってしまった場合は、在宅酸素療法も適用されます。これは酸素供給機を自宅に設置して酸素を吸入する方法で、入院しなくて済むという利点があります。
禁煙に加えて、やせ防止と運動も大切
日常生活上の注意としては、やはり禁煙が第一でしょうか。
長瀬 COPD患者が喫煙を続ける限り、坂を転げ落ちるように悪くなるしかありません。禁煙すればCOPDの進行を食い止められるので、どうしても禁煙が必須です。本人の意思を確認しながら、内服薬バレニクリン(商品名チャンピックス)やニコチン貼付剤により禁煙治療を進めます。
ただし、COPD患者が禁煙するのは当然として、早期に禁煙してほしいのは、今後COPDを発症する可能性のある人です。少しでも早く禁煙して、肺機能の低下を止めてほしいと願います。
禁煙以外に、日常生活において心掛けるべきことは何でしょうか。
長瀬 まずは栄養状態を良好に保つことです。COPD患者にはやせた人が多いことが分かっています。理由の1つは食欲の低下です。COPDになると、肺が過度に膨張し、横隔膜が下がって胃が押され、胃の容量が減ってしまい、食欲が落ちてしまうのです。緊急入院したCOPD患者を調べた研究によると、BMI(*2)が18.5未満のやせ形の人は死亡率が有意に高いことが分かっています(*3)。一度に少ししか食べられなければ食事の回数を増やすなど、適正体重を維持するよう心掛けていただきたいと思います。
栄養と並んで、運動も欠かせません。息が切れると動かなくなり、全身の機能も落ち、いっそう動かなくなる…という悪循環に陥りがちですが、身体活動性が高い人ほど、COPDの経過は良い傾向があります。平地をゆっくり歩くだけでもいいので、続けられる運動をしてください。
*3 Yamauchi Y, et al. Paradoxical association between body mass index and in-hospital mortality in elderly patients with chronic obstructive pulmonary disease in Japan. International Journal of COPD. 2014;9:1337-1346.
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