タバコの煙が、肺に異常を来す仕組みを教えてください。
長瀬 タバコの煙はさまざまな有害物質を含んでいます。細かな粒子が肺に届くと、一番奥の方にある気道(末梢気道)が細くなったり塞がったりしてしまい、ガス交換を行う肺胞という袋が徐々に破壊されていきます。さらに、末梢気道は炎症も起こします。肺は一度壊れると元に戻らない臓器で、肺胞の破壊と炎症の2要素がそろうと、COPDはどんどん進行します。
なお、近年注目されているのは、COPDの患者は肺以外の病気を合併する頻度が高いことです。よく見られるのは、動脈硬化や虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)、糖尿病、骨粗しょう症、うつ・記銘力低下、胃食道逆流症などです。その理由は明確ではありませんが、いずれもしっかりケアしなければならない病気なので注意が必要です。
治療の目的は、呼吸機能の下降スピードを少しでも遅らせること
COPDはどのように診断するのでしょうか。
長瀬 COPDの患者さんは息を吐き出す力が落ちていますので、スパイロメーターという装置で思い切り息を吐ききり、「1秒率」(*1)という数値を測ります。その値が70%を切っており、なおかつ喫煙歴があればCOPD と診断されます。かかりつけの診療所でこの検査ができなければ、対応できる病院で検査・診断を受け、また診療所に戻ります。これを病診連携といいますが、COPD はこれが一番うまく機能する病気の1つだといわれています。
治療に用いるのはどのような薬なのですか。
長瀬 肺の組織は一度壊されると、残念ながら元に戻ることはありません。図1の通り、喫煙すると呼吸機能が急激に下がるので、そのカーブを少しでも緩やかにすることを目的として治療します。
COPDでは末梢気道が狭くなって空気が通りにくくなり、特に息を吐くのが困難になります。この細くなった気管支を開いてくれるのが、吸入タイプの気管支拡張薬です。気管支拡張薬は継続して使えばCOPDの急激な悪化を予防できます。空気が通りやすくなって息切れが改善すれば、生活の質も高まります。
- 次ページ
- COPDの主な治療薬は?
