今年もスギ花粉症のピークがようやく過ぎ去りつつある。つらい目や鼻の症状を薬でなんとかやり過ごした人の中には、「来年こそ花粉症から解放されたい」と思う人もいるのではないだろうか。スギ花粉に対する免疫をつけ、花粉症の症状そのものを出にくくする「舌下免疫療法」を始めるなら、オフシーズンがオススメ。どの程度の効果が期待できるのか、新たに加わった錠剤の効果などについて、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック(東京都品川区)院長の永倉仁史氏に聞いた(花粉症のシーズン中の治療について解説した前編はこちら)。

舌下免疫療法の効果は、「非常に良い」「良い」が9割を超える
毎日薬を使ってスギ花粉の免疫をつける治療に取り組む人は増えていますか。これはどのような方法なのでしょうか。
永倉 スギ花粉症の患者は年々増加していて、シーズン中、多くの人がアレルギー症状を抑える内服薬、点鼻薬、点眼薬の3点セットを使っています。前編でもお話しした通り、新しい薬が次々に登場しているのは良いことですが、症状を抑える薬は「対症療法」にすぎず、薬がなければつらい症状に悩まされることになります。
近年、こうした毎年のつらい症状から解放されるために、「免疫療法」にトライする人が増えてきました。スギ花粉の「抗原」を少量ずつ体内に入れることで、体を慣れさせ、アレルギー反応が起きないようにする治療です。
免疫療法には長い歴史があり、日本でも古くからアレルギーを軽減させる知恵がありました。例えば、漆職人の世界では、新しく弟子が入ったとき、舌の下に少量の漆を置いて徐々に増量しながら体を慣らす習慣があるといいます。これと同じように体質を変えていくのが免疫療法です。
スギ花粉症に対しては、2014年にスギ花粉の抗原エキス(商品名シダトレン)が発売されて以来、10万人以上の患者さんがこの治療に取り組んでいます。1日1回、少量のエキスを舌の下に乗せる方法なので、「舌下免疫療法」と呼ばれます。飲み込むと有効成分が消化器で分解されてしまうので、口の中の粘膜から吸収させるのです。治療開始は「スギ花粉の飛散時を避ける」のがルールです。スギ花粉の飛散が終わり、症状がなくなるこれからの時期は、開始のベストタイミングと言えます。
舌下免疫療法によってどのくらいの効果が期待できるのでしょうか。
永倉 シダトレンを使っている当院の患者さんにアンケートを行ったところ、9割以上の人が、治療効果が「非常に良い」「良い」と回答しました。3~5年は使い続けることが推奨されていますが、図1の通り、1年目からかなり効果があることが明らかです。
3年目の「非常に良い」「良い」の合計が、2年目より少し下がっているのが気になるかもしれませんが、これは症状が軽減して免疫療法をやめる人がカウントされなくなるためだと思われます。年によって花粉の飛散量も違うので多少の増減はありますが、それでも9割以上を常にキープしており、免疫療法の効果は非常に高いといっていいでしょう。
この記事の概要
