保険診療で禁煙治療を受けられる医療機関は現在、約1万6000施設(日本禁煙学会調べ)。当初は「禁煙でわざわざ病院に?」と思う人さえいた禁煙外来も、すっかりメジャーな存在になってきた。さらに2016年4月から、34歳以下の人に限り、総喫煙量(1日の喫煙本数×年数)が所定の条件を満たさなくても保険診療の範囲内で治療を受けられるようになり、若年層の禁煙が進むことが期待されている。禁煙外来での治療方法や、タバコを取り巻く社会情勢について、日本禁煙学会理事長の作田学氏にお聞きした。
ニコチンは、麻薬と同じように依存性が非常に高い有害物質
分煙化が進み、タバコを吸いにくい社会になってきましたが、喫煙する人の数はどう推移していますか。

作田 現在、日本では推計で2084万人もの人が喫煙しています(2015年全国たばこ喫煙者率調査)。喫煙率がピークだった1966年は男性83.7%、女性18.0%と高い割合でしたが、2015年には男性31.0%、女性9.6%(計19.9%)まで下がりました。2010年にタバコが大幅に値上がりした際、禁煙する人がかなり増えたものの、喫煙者数はある程度のところで下げ止まり、横ばい状態になっているのが現状です。
タバコの煙には約4000種類(*1)もの化学物質が含まれています。その中にはがんの原因となる有害物質(発がん性物質)も多く含まれています。タバコを吸うと、ゆっくりではありますが、肺をはじめとして体のあちこちにがんの発生を促します。さらに、血管を収縮させるので、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まります。
喫煙者本人が吸う「主流煙」はもちろん、周囲の人が吸う「副流煙」も、がんのリスクを高めます。妊婦であれば流産の恐れもあり、無事出産できたとしても低体重児になりやすいなど、その影響は深刻で、「つい吸ってしまった」では済まされません。
しかし、これほどタバコは「百害あって一利なし」という認識が広まっているはずなのに、依然として人口の2割近い人が禁煙しない、あるいは禁煙できないというのが現状です。
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