ふくらはぎの表面の血管がボコッと盛り上がる下肢静脈瘤。その患者数は約1000万人にものぼります。重力に逆らえず脚に血液が滞るのは、人間が二足歩行で暮らし始めた宿命といえるでしょう。下肢静脈瘤は直接生死にかかわる病気ではありませんが、気になるのは見た目です。下肢静脈瘤の治療に詳しい、お茶の水血管外科クリニック院長の広川雅之氏に、治療法やケアのポイントについて話をうかがいました。
下肢静脈瘤ってどんな病気?
下肢静脈瘤は、特に若い世代にはなじみの少ない病気です。なぜ起こるのか、どのような症状が出るのか、基本的なところを教えてください。
広川 「下肢=脚、静脈=血管の名前、瘤=コブ」の通り、下肢静脈瘤の典型例は、脚の血管がコブのように浮き出る状態です。下肢静脈瘤はこのタイプを含めて4つに分けられます(下図)。
人の身体には動脈と静脈の2種類の血管があります。動脈は、手であれば指先へ、脚ならつま先へと、心臓のポンプ作用で全身に血液を送っています。一方、静脈は、動脈によって運ばれた末端の血液を心臓に戻すのがその役目です。
ところが、手は心臓と同じ高さにあるので難なく心臓に戻りますが、脚の場合は簡単にはいきません。つま先から心臓までの約1.2メートルを、重力に逆らって血液を持ち上げなければならないからです。さらに、持ち上げた血液が脚に戻らないようにキープすることも必要です。この機能を担うのが「静脈弁」です。血液が心臓に向かう時に静脈弁は開き、その後はピタッと閉じて、血液が逆流しないように機能します。脚の静脈弁が何らかの原因で壊れると、血液が脚にたまって血管がふくれる―これが下肢静脈瘤です。
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