目がグルグル回るような、回転性のめまいを伴うことで知られる「メニエール病」。耳が詰まるような圧迫感から始まり、難聴や耳鳴り、めまいなどの発作を繰り返す病気だ。従来は水分を制限するのが基本だったが、近年は、「水分は多く摂取するべき」と方針が正反対に変わりつつある。そんなメニエール病診療の現状について、水分摂取療法の先駆者、北里大学医学部教授・同大学東病院神経耳科科長の長沼英明氏に聞いた。
多くは耳の閉塞感から始まり、低音から聞こえにくくなる
メニエール病はどのような仕組みで起こる病気なのでしょうか。
長沼 耳の中は、入口にあたる外耳道から、その奥に鼓膜、さらに向こうに中耳、内耳と続いています(図1)。内耳の内リンパ腔という場所はリンパ液で満たされているのですが、それが増えすぎて「内リンパ水腫」を起こし、めまいや難聴などの症状を生じると考えられているのがメニエール病です。

内耳には、蝸牛(かぎゅう)という音を感じる器官があり、ここに水腫ができて最初に現れやすい症状が、耳が詰まったような圧迫感、耳閉塞感です。次第に、低音部から中音部にかけて聞こえにくくなる難聴や耳鳴りなど、「聞こえ」に関する症状も出てきます。これらは蝸牛症状と呼ばれ、その段階でとどまるものを「蝸牛型メニエール病」といいます。多くの場合はさらに進行し、目が回るような「回転性めまい」の発作を伴うようになり、本格的なメニエール病へと進んでいきます(表1)。
耳の聞こえに関する症状(蝸牛症状) |
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回転性めまい |
20分以上続く、目がグルグル回る「回転性めまい」が起きる(2回以上)。ただし、蝸牛型メニエール病ではめまいを伴わない |