脳ドックなどで偶然見つかることの多い、脳動脈瘤。破裂すればくも膜下出血となり、致死率は3割を超えるが、破裂しないまま一生を終えることもあり、治療すべきかどうか頭を悩ませる人も少なくない。近年は、脳動脈瘤を取り除く治療も大きく進化している。未破裂脳動脈瘤の怖さと最新の治療技術について、世界的な治療実績を持つ昭和大学医学部脳神経外科学講座主任教授の水谷徹氏に聞いた。
脳動脈瘤は、動脈硬化とは関係なく、物理的な刺激で生じる
脳の中になぜ動脈瘤ができるのか、まずは病気の成り立ちについて教えてください。
水谷 動脈瘤は動脈の一部がコブ状に膨らむもので、これが脳の動脈にできると脳動脈瘤と呼ばれます。その多くは動脈が枝分かれするところにできます(図1)。血管の分岐部は血流が当たり続けるため、壁が弱くなり、コブのように膨らみやすいのです。

動脈の病気はメタボリックシンドローム(メタボ)の人に多いと思われがちですが、脳動脈瘤の多くは、メタボの有無とは関係なく、血管壁に血流が当たるという物理的な刺激で生じます。メタボの人によく見られる、血管の中にコレステロールなどがたまる動脈硬化とは成り立ちが全く違うことに注意が必要です。
脳動脈瘤は、脳を覆う軟膜とくも膜の間にある、くも膜下腔というスペースに見られます。破裂する前に発見されるものを未破裂脳動脈瘤といい、破裂して起こるのが、致命率が高いことで知られるくも膜下出血です。
脳動脈瘤ができやすいのはどんなタイプの人ですか。
水谷 顕著に多いのは喫煙者です。また、タバコを吸わなくても、近親者にくも膜下出血を起こした人や脳動脈瘤のある人がいるなど、遺伝的要素による場合もあります。
年齢でいえば若い人より中高年に多く、性別では男性より女性のほうが1割ほど多く見られます。脳動脈瘤ができる場所によっては3~4倍も女性のほうが多いこともあるのですが、女性に多い理由は分かっていません。
くも膜下出血はハンマーで殴られるような強い頭痛が特徴だと聞きます。脳動脈瘤にも症状があるのでしょうか。
水谷 破裂していない段階で症状が出るかどうかは、脳動脈瘤ができる場所や大きさによります。一番多いのは、目を動かす神経が脳動脈瘤に圧迫される「動眼神経麻痺」で、まぶたが勝手に閉じる、物が二重に見えるなどの症状が現れます。脳動脈瘤が視神経の近くにあれば視野が欠けることもあります。
ただし、多くの場合、未破裂脳動脈瘤に症状はありません。症状が出やすいのは大きな脳動脈瘤ですが、3~4mmであってもまず症状は出ないと言っていいでしょう。
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