デリケートな部分の悩みだけに、なかなか人に相談しづらい「痔」。治療の選択肢が増えた今、重い腰ならぬ、重いお尻を上げて受診する人が増えている。切る治療・切らない治療それぞれの特徴について、肛門疾患に詳しい東京山手メディカルセンター副院長で大腸肛門病センター長の佐原力三郎医師に聞いた。
お通じが毎日ない人は痔になりやすい?
痔は受診しにくい病気の筆頭です。どのような病気なのかを教えてください。
佐原 大なり小なり、年をとれば痔を持っている人は増えてきます。硬い便を無理に出した時のように、ちょっとした出血なら誰でも経験があるでしょう。
肛門の病気全般を広く「痔」と呼んでいますが、お尻が痛い、出血するなど、症状はさまざまです。よく知られている痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)のほか、痔ろう(あな痔)という、肛門の内側から外に向かってトンネルができるタイプもあります(下図)。このうち、裂肛は女性に多いのに対して、痔ろうは圧倒的に男性が多いという特徴があります。
佐原 痔は遺伝するわけではありませんが、家族に痔の持ち主がいるとなりやすいと言われます。一緒に暮らすうちに生活習慣や食べ物の好みが似てきて、排泄にも影響するのでしょう。
痔になりやすい生活習慣というのはどういうものですか。
佐原 痔は生活習慣からくる病気で、一番の要因は何といっても排泄です。人が一生食べ続ける限り、排泄はついてくるもの。便秘で便が硬い人が痔(切れ痔)になると思われがちですが、痔ろうのように下痢を背景とするものもあります。柔らかすぎず硬すぎず、排出しやすい便かどうかという、便の性状が痔に大きく影響します。