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季節の病気を上手に防ぐ

A香港型インフルエンザはなぜ怖い?

気になるワクチンや薬の最新情報

 田中美香=医療ジャーナリスト

A香港型にはワクチンが効きにくい

早くも流行シーズンに突入。(©lightwise-123rf)
早くも流行シーズンに突入。(©lightwise-123rf)

 さらに、A香港型を警戒しなければならない理由が、ワクチンの効果の低さだという。菅谷氏によると、A香港型に対するワクチンの効果は、健康な成人で40~50%。さらに、65歳以上の高齢者では効いても20%程度と、低い数字だ(*1、2)。

 A香港型は、なぜそれほどワクチンの効果が低いのだろうか。その要因は、ワクチンの製造過程で、ウイルスが変異しやすいという性質にある。

 毎年2月になると、WHO(世界保健機関)は、その年(次の冬)に流行するインフルエンザウイルスを推定し、ワクチンの元となる推奨株を作る。その推奨株を使って、世界各国がほぼ同じワクチンを製造している。インフルエンザのワクチンは、推奨株を鶏卵の中で増殖させて製造するが、菅谷氏によると、A香港型は、ほかの型に比べて鶏卵での増殖過程で変異しやすい性質を持っているという。そのため、結果として、推奨株から大きく変異したウイルスを基にしたワクチンとなってしまう。「このことが、A香港型に対するワクチンの効果が上がりにくい原因と考えられています」(菅谷氏)。

ワクチンは自分のため、そして周りの大切な人のために接種しよう

 ワクチンの効果が低いと聞けば、接種しても意味がないと思う人もいるだろう。だが、菅谷氏は、「A香港型に対してワクチン効果が比較的低いのは事実ですが、だからといって接種しても無駄ということではありません。今からでも、ぜひ接種していただきたいと思います」と強調する。今年、現時点で、菅谷氏が代表を務める慶応小児科インフルエンザ研究グループから、小児のA型(ほとんどがA香港型)インフルエンザに対して、ワクチンの効果は60%という速報値が報告されている。

 またワクチンは、同じA型のH1N1には高い効果が認められている。「慶応小児科研究グループの調査では、H1N1が流行した昨シーズン、6カ月から15歳までのインフルエンザ患者4727人を対象に調べたところ、ワクチンの有効性は、B型も含めた全体では46%。A型では63%、H1N1では、77%でした」(菅谷氏)。さらに、ワクチンには間接的な予防効果(indirect protection)もある。「かつて『集団免疫』と呼ばれましたが、接種して自分を守るだけでなく、高齢者や子どもなど、身近にいる重症化しやすい人の感染のリスクも下げるというものです。ですから、高齢者や小さなお子さんのいる家庭では、家族全員が接種する必要があります」(菅谷氏)。

 「indirect protection」の一例は、肺炎球菌ワクチンだ。子どもへの肺炎球菌ワクチン接種が始まってから、高齢者の肺炎球菌感染症も減ったという事実が報告されている(*3)。インフルエンザワクチンの有効性を上げる取り組みが求められていることは確かだが、周りの大切な人たちを守るためにも、ワクチン接種は必要だと菅谷氏は強調する。

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