タミフル=異常行動を起こす薬ではない
インフルエンザ治療に用いる抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)には、現在、4つの種類がある(表1)。「これらの薬の効果はほぼ同じと考えられていますので、飲み薬か吸入薬か点滴か、1日2回か、1回のみか、といった使い勝手を基準に医師が使い分けています」と菅谷氏。たとえば、嘔吐がある人は飲み薬よりも吸入薬が向くし、認知症で吸入や定期的な服薬が難しい高齢患者であれば、点滴も選択肢になるだろう。
商品名 | 一般名 | 製剤の形態 | 治療に用いる場合 | 予防的に使用する場合 |
タミフル | オセルタミビル | 経口薬 | 1日2回×5日間 | 1日1回×7~10日間 |
リレンザ | ザナミビル | 吸入薬 | 1日2回×5日間 | 1日1回×10日間 |
イナビル | ラニナミビル | 吸入薬 | 1回のみ | 1日1回×2日間 |
ラピアクタ | ペラミビル | 点滴 | 1回のみ | 2014年12月現在、予防的投与は認められていない |
なお、数年前、タミフル(一般名:オセルタミビル)を服用した未成年者に異常行動が表れた事例が大々的に報道され、「タミフルは怖い薬だ」と思った人も多いだろう。こうした事例の報告を受けて、タミフルの添付文書には、「10歳以上の未成年の患者に対しては原則として使用を差し控えること」と記載されている。だが、菅谷氏によれば、タミフルと異常行動との因果関係は、現在では否定されているという。
「インフルエンザにかかり、抗インフルエンザウイルス薬を服用した後の転落死の事例は、タミフル8例、リレンザ1例、イナビル1例が報告されています。タミフルだけが突出しているように見えますが、他の薬とは服用した人数、つまり分母が違います」(菅谷氏)。また、子どもがインフルエンザにかかると、熱せん妄と呼ばれる症状が現れやすい。例えば、誰もいない場所を指さして「誰かが立っている」「天井に顔が見える」などと言って怖がる、興奮する、意味不明の言動をする、といった症状だ。こうした症状は、タミフルを服用していない場合にも表れ、転落・飛び降りなどにつながるとの見方がなされている。
「インフルエンザにかかり、タミフルを飲んでいない子どもでも、転落死は1例、私が知るだけでも飛び降りて骨折した例が3例あります。異常行動は、薬のせいではなく、インフルエンザ自体によって起こると考えるのが妥当でしょう」(菅谷氏)。
つまり、子どもがインフルエンザに感染した場合、薬の服用に関係なく、できるだけ目を離さず、注意して見守る必要があるということだ。
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