寒い季節になると、注意したいのは高血圧だ。急激な温度変化によって起こるヒートショックには、高血圧が深くかかわっている。自分は血圧が正常だから関係ないと思っていても、実は「仮面高血圧」の可能性も。冬に血圧が上がるメカニズム、高血圧対策のポイントを横浜市立大学附属病院腎臓・高血圧内科 診療科部長・主任教授の梅村敏氏に聞いた。
高血圧に特に注意が必要なのは、血圧が変動しやすい冬

北風の吹くこの季節は、1日の終わりに湯船にゆっくり浸かり、冷えた体を温めたいもの。だが、冬の入浴で注意したいのが、血圧の急激な変化だ。
血圧は一般的に暑い場所では下がり、寒い場所では上がる特徴がある。寒い時は体温を下げないように血管が収縮して血圧が高まるが、暑い時は熱を放出して体温を下げようとして血管を広げ、さらに発汗も加わり血圧が下がる。このように、我々の体は、環境に適応しようとするメカニズムによって守られている。
しかし、血圧の変動があまりに大きすぎると、急激に心臓・脳に負担がかかり、脳卒中、心筋梗塞などによる突然死を起こす恐れがある。冬は、屋内であっても場所によっては寒暖差が大きく、血圧も上下しやすい。その危険性の高い典型的な場所がお風呂だ。入浴時には脱衣場と風呂場、湯船の中と温度差が大きくなるため、急激に血圧が上下しやすい(下図)。
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熱い湯船に入ると交感神経が緊張し、血管が収縮して血圧がさらに高くなる
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ゆっくり湯につかるうちに血圧が下がる
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湯船を出て体が急速に冷えると再び血圧が上がる
このような急激な温度の変化で、身体がダメージを受けるのが「ヒートショック」で、上記のような血圧変動も強く関係する。入浴中にヒートショックに関連していると思われる心肺停止状態になった人数は、冬季を中心に年間約1万7000人(*1)にものぼると推計され、交通事故死の約4倍以上にあたる(下図)。
http://www.tmghig.jp/J_TMIG/release/pdf/press_20140326_2.pdf
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