日経グッデイ

季節の病気を上手に防ぐ

怖い入浴中の突然死、ヒートショックはなぜ起こる?

冬場に注意したい高血圧【前編】

寒い季節になると、注意したいのは高血圧だ。急激な温度変化によって起こるヒートショックには、高血圧が深くかかわっている。自分は血圧が正常だから関係ないと思っていても、実は「仮面高血圧」の可能性も。冬に血圧が上がるメカニズム、高血圧対策のポイントを横浜市立大学附属病院腎臓・高血圧内科 診療科部長・主任教授の梅村敏氏に聞いた。

高血圧に特に注意が必要なのは、血圧が変動しやすい冬

サウナ、露天風呂…家庭だけでなく公衆浴場も要注意。(©rido-123rf)

 北風の吹くこの季節は、1日の終わりに湯船にゆっくり浸かり、冷えた体を温めたいもの。だが、冬の入浴で注意したいのが、血圧の急激な変化だ。

 血圧は一般的に暑い場所では下がり、寒い場所では上がる特徴がある。寒い時は体温を下げないように血管が収縮して血圧が高まるが、暑い時は熱を放出して体温を下げようとして血管を広げ、さらに発汗も加わり血圧が下がる。このように、我々の体は、環境に適応しようとするメカニズムによって守られている。

 しかし、血圧の変動があまりに大きすぎると、急激に心臓・脳に負担がかかり、脳卒中、心筋梗塞などによる突然死を起こす恐れがある。冬は、屋内であっても場所によっては寒暖差が大きく、血圧も上下しやすい。その危険性の高い典型的な場所がお風呂だ。入浴時には脱衣場と風呂場、湯船の中と温度差が大きくなるため、急激に血圧が上下しやすい(下図)。

温かい部屋から寒い脱衣所に行くと血圧が上がる

熱い湯船に入ると交感神経が緊張し、血管が収縮して血圧がさらに高くなる

ゆっくり湯につかるうちに血圧が下がる

湯船を出て体が急速に冷えると再び血圧が上がる

 このような急激な温度の変化で、身体がダメージを受けるのが「ヒートショック」で、上記のような血圧変動も強く関係する。入浴中にヒートショックに関連していると思われる心肺停止状態になった人数は、冬季を中心に年間約1万7000人(*1)にものぼると推計され、交通事故死の約4倍以上にあたる(下図)。

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*1 全国47都道府県635消防本部調査
http://www.tmghig.jp/J_TMIG/release/pdf/press_20140326_2.pdf

 ヒートショックを起こしやすいのは、血管が弱くなっている高齢者だけと思いがちだが、40代以降のビジネスパーソンも決して他人事ではない。冬は血圧が上がりやすいことに加え、普段から高血圧になっていることに気づいていないケースもあるためだ。高血圧は日本人約4300万人(*2)が抱える国民病。働き盛りの40代、50代も大きなリスクを抱えている。まずはヒートショックを防ぐための工夫を知っておこう。(下表)。

寒い季節に血圧を上げない工夫例
脱衣所や浴室内を温めておく脱衣所に小型ヒーターを設置し、浴室内は湯船の蓋を先に開けておいたり、シャワーの湯気で温めたりすると、寒暖差を最小限に抑えることができる
湯温は41℃以下にとどめる寒い季節こそ、熱い風呂にドボンと入りたいと思うもの。これをぐっとこらえて、かけ湯をしながら入ろう。冷水浴やサウナは温度差が激しく危険なので避けること
食事の直後や飲酒後の入浴は控える食事やアルコールを飲んだ直後は血圧が下がりやすいので、温度差の大きい場所に身を置かないよう気をつけよう
ヒーターはトイレにも設置するトイレは室温が低い上、お風呂同様、肌を露出する場所でもある。便座カバー・暖房便座を活用するか、脱衣所同様、トイレにも小型ヒーターを設置する
起床時、寒い状態のまま活動しない起床してすぐ動かず、部屋が温まってから着替える。洗顔は冷水でなくお湯かぬるま湯がよい

 後編「高血圧は40代以降を襲うサイレントキラー」では、働き盛りのビジネスパーソンを密かに襲う、“隠れ高血圧”などの話題をお届けする。

*2 循環器の予防に関する調査;NIPPON DATA2010
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf

(取材:稲垣麻里子、まとめ:田中美香)

梅村 敏(うめむらさとし)さん
横浜市立大学附属病院腎臓・高血圧内科 診療科部長・主任教授
梅村 敏(うめむらさとし)さん 1975年横浜市立大学医学部卒業後、米国クレイトン大学医学部高血圧研究所・助教授を経て、1998年横浜市立大学内科学第二講座・教授、2008年同大医学部長、2010年病院長、2012年より横浜市立大学学術院・医学群長を歴任。
著書に、『高血圧にならない、負けない生き方(日本屈指の名医が教える「健康に生きる」シリーズ)』(2015年、サンマーク出版)ほか多数。
編集協力:ソーシャライズ
病気の解説やその分野のトップレベルのドクターを紹介するWebサイト「ドクターズガイド」を運営。