日経グッデイ

季節の病気を上手に防ぐ

ひどい日焼けで肌が真っ赤に! 冷やしても痛みが引かないときは…

薬局の「あの飲み薬」が効果的

夏になると、誰もが避けて通れない「日焼け」。海水浴に行かなくても、連日の日差しと照り返しでじわじわと肌が褐色を帯びてくる。日焼けしやすいかどうかには個人差があり、悩みの度合いも人それぞれ。場合によっては、ただの日焼けではなく、日光による皮膚障害を起こすこともある。ジリジリ照りつける日光にどう対処すればいいのか、ひふのクリニック人形町院長の上出良一氏に聞いた。

あなたはどのタイプ? 色黒の人ほど紫外線に強い

 海や山にと、アウトドアが楽しくなる夏。そこで直面するのが日焼けの悩みだ。同じように屋外で過ごしても、肌が真っ赤になるが、黒くはならずに元に戻る人もいれば、どんどん黒くなる人もいて、人によって焼け方はさまざまだ。

 日焼けには、サンバーン(sun burn)とサンタン(suntanning)の2種類がある(図1)。日焼けをすると、まず肌が赤くなり、皮膚がやけどを起こした状態(サンバーン)となり、その後、黒くなる(サンタン)。サンバーンは皮膚の炎症、サンタンは炎症後の色素沈着だ。皮膚のタイプによってサンバーンとサンタンの程度は異なり、色白の人はサンバーンを起こしやすい。一方、色黒の人はサンバーンを起こしにくく、色素が沈着してさらに肌の色が黒くなる(サンタン)。その理由は、皮膚に存在するメラニンという色素を合成する能力の違いだ。

図1 サンバーンとサンタンの違い
色白の人ほど、紫外線のダメージで皮膚に炎症が起こって赤くなりやすい(サンバーン)。地黒の人は紫外線のダメージが小さく、赤くならずに黒くなる(サンタン)。人によってそれぞれの程度は異なる。
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 メラニンは、紫外線による炎症を防ぎ、紫外線から肌を守る大切な役割をしている。色が黒くなるサンタンは、メラニンが沈着した結果で、一種の防御反応といえる。メラニンの合成能力が低い人(サンタンを起こしにくい人)は紫外線のダメージを受けやすく、日光を浴びると赤くなり、あまり黒くならない。逆に、メラニンの合成能力が高い人(サンタンを起こしやすい人)は紫外線のダメージを受けにくく、すぐに肌が黒くなるという特徴がある。

 白色人種(白人)は、メラニンの合成量が少ない。このため、日に当たると皮膚は容易に赤くなり、黒くならないので常にダメージが大きい。一方、メラニンの合成量が多い黒色人種(黒人)は、もともと黒いので皮膚にダメージを受けにくい。皮膚の色によって、手入れの仕方も違ってくる(図2)。

図2
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 黄色人種の皮膚色はその中間で、サンバーン後にサンタンを生じる。同じ日本人でも、色白の人は赤くなるサンバーンが強く、色黒の人はあまり赤くならず褐色のサンタンが生じやすいなど、反応に個人差がある。自分の皮膚タイプを知りたいなら、下着に隠れたお尻の色を見てみるといいだろう。「お尻が白ければ白人に近く、地黒なら黒人に近い反応を示します。ふだん日光に当たらないお尻の色が、その人の本来の皮膚のタイプです。顔や手足のように、目に入る“表向き”の色で判断しないでください」(上出氏)

ひどい日焼けにはロキソニンやバファリンもお薦め

 一般的に日本人がサンバーンを起こすのは、晴れた夏の昼間に、20分、日光に当たった時。この時の紫外線量を、最少紅斑量という。最少紅斑量の日光に当たると、およそ4時間後に肌がヒリヒリし始め、24時間でピークに達する。

 日焼けは一種のやけどだ。紫外線のうち、特にUVBに大量に当たるとDNAがUVBを吸収して傷ついてしまう。その結果皮膚の細胞がダメージを受ける(表1)。真っ赤になる、腫れる、水ぶくれができるなどの炎症は、体が一生懸命回復しようとするために起こる反応だ。

表1 紫外線にはどんな種類がある?
  UVA
(紫外線A波)
  • 紫外線の約9割を占めるが、UVBほど作用が強くない
  • 物質を透過しやすく、窓ガラスも通り抜ける
  • 皮膚の奥まで届き、コラーゲンを変性させてシワ・たるみの原因となる
UVB
(紫外線B波)
  • 紫外線のうち約1割に過ぎないが、作用が強い
  • 皮膚の表面で吸収され、サンバーン・サンタンを起こす
  • シミ・そばかす、皮膚がんの原因にもなり得る
その他
  • オゾン層で吸収されて地表までほとんど届かない
  • 「UVC」(紫外線C波)のほか、目に見える「可視光線」、目に見えない「赤外線」などがある

 日焼け後のケアは、やけどと同じと考えるとよい。屋外にいるうちからヒリヒリし始めたら、「マズいことになる」というサイン。氷がなければ、ぬれタオルを当てて扇風機に当たるだけでもいいので、まずは冷やすことが第一だ。少し冷やして落ち着けば病院まで行く必要はないが、水ぶくれができたら受診をお勧めしたい。「水ぶくれに対しては、皮膚に穴をあけて水を出す処置を行います。ただ、それは皮膚科で行うものなので、安易に自己流で済ませないように」(上出氏)。

 ひどい日焼け(サンバーン)で皮膚科を受診すると、抗炎症薬であるステロイドの塗り薬・飲み薬を処方されることが多い。だが、日焼けをどう治療するのが最適か、という点について確固たる論文は少なく、日焼けしてからステロイドを使っても効果がないとする説もある。ひどい日焼けの応急処置として、上出氏が薦めるのは「非ステロイド系の痛み止めを飲むこと」だ。

 「ステロイドを使えば多少は腫れがひきます。でも、それよりも意外と効くのが非ステロイド系の消炎鎮痛薬です。夕方からヒリヒリし始めたら、市販薬のロキソニンやバファリンを飲むといいでしょう。痛みも炎症も、少しは治まります。完全ではありませんが、何もしないよりは効果があります」(上出氏)

塗りっぱなしの日焼け止めは「光劣化」を起こす

焼きすぎにはご用心!(©Pavel Ilyukhin -123rf)

 最近の日焼け止めは、UVAもUVBもカットしてくれるスグレ物ぞろいだ。しかし、種類が多すぎてどれを使えばいいのかよく分からないのも事実。選び方について、「あまり神経質に考えなくていいのでは」と上出氏は話す。「極端な話、松・竹・梅の3段階程度で商品が出ていれば選びやすいのですが、品揃えが豊富すぎて、かえって選びにくい状況です。でもSPFPA(*1)はだいたい比例していて、SPFが高ければPAも高くなります。しっかり塗ればSPF30でほぼ防御できます」(上出氏)。

 日焼け止めを使う際は、2時間を目安に塗り直すようにしたい。それは、汗で落ちることに加えて、日焼け止めの元となる化学物質が「光劣化」を起こすからだ。光劣化とは、日光によって物質が劣化すること。日常生活ではあまりシビアに考えなくてよいが、海や山で長時間過ごす場合は、一度塗ったきりで終わらず、日焼け止めが劣化する前に塗り直そう。

妊婦と高齢者は、日光を完全防御しないで

 皮がむけるほどの日焼けは避けたいが、多少は日光に当たるほうがいい場合もある。日光に当たることで、体内にビタミンDが作られるからだ。ビタミンDは骨や筋肉を維持するのに必要な栄養素。乾燥キクラゲ、チーズ、マグロ、きのこなどに多く含まれる。バランスの良い食生活のほか、普段の買い物や外出で紫外線に当たる程度で、十分なビタミンDが生合成されるはずだ。

 注意を要するのは妊婦だ。最近は母乳で赤ちゃんを育てたいと望む女性が多いが、母乳に含まれるビタミンDはそれほど多くない。完全母乳の育児を希望するなら、日焼け止めは顔などの最小限のパーツだけにするなど、少しは日光に当たる時間も必要だ。

 また、高齢者にとっても、ビタミンDは不足しがちな栄養素の1つ。ビタミンは肝臓と腎臓で活性化されるが、高齢者はその能力が低下する。さらに、食が細くなってビタミンDの摂取量も少なくなるので、高齢者は閉じこもらないで外に出ると効果的だ。

 「紫外線は、直射日光だけではありません。空気中のエアロゾルという細かいチリが日光を散乱するので、木陰にも紫外線が届きます。時々、皮膚がんになるからと言って極端に外出を避ける人がいますが、皮膚がんになる前に栄養失調になりかねません。真っ赤になるほどの日焼けは避けるべき。かといって、過剰な防御もダメです。知らず知らずの間に日に当たるくらいが適切です」(上出氏)。

*1 SPF(sun protection factor)は、紫外線の中でも特にUVBをカットする割合のこと。PA(protection grade of UVA)はUVAを防ぐ効果を示し、+、++、+++、++++の4段階で表示される。

日焼けとは別に日光に関連する病気もある
~多形日光疹と日光蕁麻疹~

 日に当たれば誰でも日焼けをするが、ただの日焼けではないこともある。日光で皮膚障害を起こす光線過敏症だ(表2)。光線過敏症は、通常の日常生活で浴びる程度の光線に過敏に反応し、異常な皮膚症状が出現する病気の総称。様々な種類があるが、一番多いのが多形日光疹だ。多形日光疹は、日に当たっている最中は何ともないのに、夕方から腕の外側が赤くなり、ブツブツした湿疹が出現する。紫外線に当たることで肌の中にアレルゲンができ、それにアレルギー反応を起こしている状態で、消えるまでに、数日以上かかるという。

表2 日光を浴びて起こる主な光線過敏症
多形日光疹
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  • 日が当たって数時間後に前腕の外側などにブツブツが出る
  • デコルテや手の甲に出ることもあるが、顔にはあまり出ない
  • 紫外線を原因とすることが多い
  • 日焼け止めが効きやすい
日光蕁麻疹
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  • 日に当たってすぐにみみずばれが出るが、日陰に移動すると間もなく消える
  • 可視光線を原因とすることが多い
  • 日焼け止めが効きにくい
(写真提供:上出良一氏)

 多形日光疹と紛らわしいのが、日光蕁麻疹だ。日に当たって肌がボテっと腫れ(膨疹)、かゆみが出るが、1時間も日陰に入っていれば跡形なく消えていく。日光蕁麻疹も、日光(主に可視光線)に当たった皮膚でアレルゲンが産生され、それが元で生じるアレルギー反応と考えられている。多形日光疹と異なる点は、日に当たっている最中からかゆくなることと、その日のうちに腫れがひくことだ。

 日焼け止めが効くかどうかも、この2つが異なる点だ。多形日光疹は紫外線が原因なので、日焼け止めが有効だ。しかし、日焼け止めは紫外線しかカットしないので、主に可視光線が原因の日光蕁麻疹にはあまり効果がない。衣類でカバーするか、あるいは日光に少しずつ慣れることも効果的だという。

 「皮膚を日光に慣れさせて強くすることをハードニング(hardening)といいますが、防御するだけでなく、慣らすことも大切です。その証拠に、夏の初めは日光による皮膚症状が出やすいのに、真夏には出にくくなるものです。多少の日焼けは、それほど悪いことではないのです」(上出氏)。

(取材:稲垣麻里子/文:田中美香)

上出良一(かみで りょういち)さん
ひふのクリニック人形町 院長
上出良一(かみで りょういち)さん 1973年東京慈恵会医科大学卒業。同大学皮膚科学講座教授を経て、2007年東京慈恵会医科大学附属第三病院皮膚科診療部長。2014年にひふのクリニック人形町を開院、東京慈恵会医科大学客員教授も兼任する。専門は光皮膚科学のほか、皮膚アレルギー、皮膚悪性腫瘍など。
著書に『知って防ごう有害紫外線』(共著、少年写真新聞社)、『紫外線環境保健マニュアル2008』(共著、環境省)、『からだと光の事典』(監修・分担執筆、朝倉書店)ほか多数。
編集協力:ソーシャライズ
病気の解説やその分野のトップレベルのドクターを紹介するWebサイト「ドクターズガイド」を運営。