塗りっぱなしの日焼け止めは「光劣化」を起こす

最近の日焼け止めは、UVAもUVBもカットしてくれるスグレ物ぞろいだ。しかし、種類が多すぎてどれを使えばいいのかよく分からないのも事実。選び方について、「あまり神経質に考えなくていいのでは」と上出氏は話す。「極端な話、松・竹・梅の3段階程度で商品が出ていれば選びやすいのですが、品揃えが豊富すぎて、かえって選びにくい状況です。でもSPFとPA(*1)はだいたい比例していて、SPFが高ければPAも高くなります。しっかり塗ればSPF30でほぼ防御できます」(上出氏)。
日焼け止めを使う際は、2時間を目安に塗り直すようにしたい。それは、汗で落ちることに加えて、日焼け止めの元となる化学物質が「光劣化」を起こすからだ。光劣化とは、日光によって物質が劣化すること。日常生活ではあまりシビアに考えなくてよいが、海や山で長時間過ごす場合は、一度塗ったきりで終わらず、日焼け止めが劣化する前に塗り直そう。
妊婦と高齢者は、日光を完全防御しないで
皮がむけるほどの日焼けは避けたいが、多少は日光に当たるほうがいい場合もある。日光に当たることで、体内にビタミンDが作られるからだ。ビタミンDは骨や筋肉を維持するのに必要な栄養素。乾燥キクラゲ、チーズ、マグロ、きのこなどに多く含まれる。バランスの良い食生活のほか、普段の買い物や外出で紫外線に当たる程度で、十分なビタミンDが生合成されるはずだ。
注意を要するのは妊婦だ。最近は母乳で赤ちゃんを育てたいと望む女性が多いが、母乳に含まれるビタミンDはそれほど多くない。完全母乳の育児を希望するなら、日焼け止めは顔などの最小限のパーツだけにするなど、少しは日光に当たる時間も必要だ。
また、高齢者にとっても、ビタミンDは不足しがちな栄養素の1つ。ビタミンは肝臓と腎臓で活性化されるが、高齢者はその能力が低下する。さらに、食が細くなってビタミンDの摂取量も少なくなるので、高齢者は閉じこもらないで外に出ると効果的だ。
「紫外線は、直射日光だけではありません。空気中のエアロゾルという細かいチリが日光を散乱するので、木陰にも紫外線が届きます。時々、皮膚がんになるからと言って極端に外出を避ける人がいますが、皮膚がんになる前に栄養失調になりかねません。真っ赤になるほどの日焼けは避けるべき。かといって、過剰な防御もダメです。知らず知らずの間に日に当たるくらいが適切です」(上出氏)。
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- 日焼けとは別に、日光に関連する病気もある