体力が落ちている高齢者は、じわじわと重症になりやすい
若い人の熱中症は、炎天下のスポーツ・労働を原因とするものが大半だが、高齢者は日常生活を送りながら、屋内で倒れることが多い。しかも、高齢者は、若い人に比べて重症になる人が圧倒的に多い点も特徴だ。「高齢者の場合、急に暑くなってからしばらくは変わりがないと思っていたのに、4日目あたりから急に熱中症を発症する人が増えます。実は、累積効果で少しずつ体力が落ちているのですが、本人も周りも気づかず発見が遅れてしまうのです」(三宅氏)。
もともと持病をもつ人が多い高齢者は、食欲が落ちて体力低下に拍車がかかり、熱中症を発症した時点ですでに重症になっている上、一人暮らしの人ではさらに発見が遅れるため注意が必要だ。
梅雨明け直後、いきなりくる夏日に注意
熱中症死亡数が1700人を上回った2010年を例に、熱中症のピークがいつなのかを考えてみよう。
梅雨が明けて一気に気温が上がり、最初の熱中症のピークがくるのが7月下旬。続いて、8月中旬頃までに2回目、3回目の波がやってくる。しかし、夏本番の8月の方が、7月よりも猛暑日・熱帯夜が続くのに、どういうわけか病院に運ばれる人は最初のピークよりも少ない(下図)。この要因について、三宅氏は次のように話す。
「2回目、3回目のピークで搬送者が減る理由の1つは、高温が続き、徐々に体が暑さに強くなる『暑さ慣れ』の影響です。2つ目の理由として、夏の初めにマスコミが熱中症の増加を大々的に報道したことで、誰もが注意するようになったことが効いていると思われます。また、体力のない人は、暑さに慣れていない最初の段階で入院か、あるいは亡くなってしまう人も多いため、その後のインパクトが減るのかもしれません。2010年は、当院でも初めのピークで入院する人が相次ぎましたが、それ以降の入院はあまり見られませんでした」。
つまり、熱中症にもっとも警戒すべきは梅雨明け直後。この第一関門をうまく乗り切るための対策を考えてみよう。
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