カビをまき散らさないよう、エアコンの管理を徹底する

谷口氏が「非常に怖い」と話すのがエアコンだ。カビはエアコンの内部まで入り込み、部屋中にまき散らされる。しかも、普段の掃除では簡単に落とすことができないのが難点だ。
「カビをきちんと除去するには、カビの生えた部分を直接こすったり、アルコールで拭いたりと、徹底的に掃除する必要があります。でも、素人にはエアコンの内部まで手が届きません。エアコン掃除用のスプレーで手入れしても、表面がきれいになるだけで、奥に生えたカビを除去するのは無理です。喘息の人など、カビアレルギーが気になる場合は、専門業者にクリーニングを頼むなどの予防策が必要です」(谷口氏)。
空気清浄機があるから大丈夫、と過信しない
ちなみに、空気清浄機はホコリと一緒に漂うカビの除去に効果はあるのだろうか。「空気清浄機を使うことは悪いことではありませんが、部屋全体のカビを除去するほどの機能はないのが現実です。アスペルギルス症の患者さんを診察する時、フミガタスに対する血中の抗体価を測りますが、空気清浄機を使って改善した人(抗体価が下がった人)はいません。それよりも、先にお話したように、部屋を替えるような根本的な対策が効果的です」(谷口氏)。
夏のエアコン同様、冬に活躍する加湿器もカビの温床になりやすく、選ぶ際は注意が必要だ。加湿器には、超音波とスチームの2つのタイプがある。スチームタイプは、ストーブの上にヤカンを置くのと同じ原理で、水蒸気が出るので無害だ。
一方、最近主流になりつつある超音波タイプは、超音波の振動で水を細かく分解してファンで飛ばすもの。スチーム型と違って煮沸消毒されず、水のタンクが掃除しにくいことなどから、霧状になった水とともにカビが飛散し、過敏性肺炎を引き起こすことがある(通称「加湿器肺」)。近年は超音波タイプも機能が進化し、問題は少なくなりつつあるが、カビアレルギーを避けるなら従来のスチームタイプが無難だ。
なお、2016年5月、韓国で、加湿器に入れて使う殺菌剤が原因で、95人もの死者が出たと報道された。このケースでは、カビではなく、殺菌剤に含まれる有害な化学物質(ポリヘキサメチレングアニジン;PHMG)が空気中にまき散らされ、これを吸ったことで健康被害が生じた。谷口氏は、化学物質が呼吸器に入ることの怖さを指摘する。
「人間は中央アフリカをルーツとして、土の上で生きてきた動物。気管支にホコリやカビが入っても、微量であれば排出できます。でも、人工的に合成された化学物質には太刀打ちできません。ケミカルなものを長期間吸い込むのは危険です」(谷口氏)。
独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター センター長

専門は、難治性の成人喘息やアスピリン喘息、アレルギー性アスペルギルス症を含むアレルギー性気管支肺真菌症。
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