効果がなければ同じカテゴリの中で処方変更するか、あるいは古典的抗うつ薬も選択肢に入れて再検討する。難治性うつ病や妊婦の重篤なうつ病にはm-ECT(修正型電気けいれん療法)を実施することもある。m-ECTは、頭部に電気刺激を与えて人為的にけいれん発作波を誘導し、脳機能の改善を図る治療法。もちろん保険診療の対象ではあるが、映画『カッコーの巣の上で』(1975年)で描かれたように、世界的にもかつては負のイメージが強く、日本では現在も実施施設が限られているため、治療の早い段階で選ぶことはないという。
うつ病を慢性化させないためには、復職後も当分は薬物療法をやめないで
うつ病で休職後、職場復帰に際して気になるのは、薬を減らし、治療を終えるタイミングだ。吉田氏が話すには、再発を回避するためには、治療終結を焦らないことが大切だという。「うつ病から回復した後、いつまで薬を飲み続ければ再発率を抑えられるかという研究(*1)があります。まずは“治る”の定義から説明が必要ですが、ここでは職場に復帰するタイミングを“寛解”、復帰後ほぼ元通りに仕事がこなせるようになった時期を“回復”と定義しておきましょうか。すると治療がかなり順調に進んだ場合でも、“寛解”までに3カ月、その後の“回復”までには6カ月ほどかかり、多くの方はこの時点で“治った”と感じるわけです。しかし回復後も、概ね36週ほど維持療法を続けて、それから治療終結とすることで、長期的な再発率は半分に抑えられる、と言われています」。
初めてうつ病と診断された人のうち、1回で治る人、何度か繰り返す人、治りにくくなって慢性化してしまう人の割合は、それぞれ三分の一程度だという。再発する人が約7割ということは、一度うつ病にかかったら、2回目があり得ると思って用心した方がいいことになる。さらに、2回うつ病になると3回目も発病する確率が高くなるため、何としても2回目の発病は避けねばならない。心身に過度の負担がかからないよう環境を整え、医師の助言を守って、服薬を継続することが大切だ。
医療法人社団惟心会理事長

精神保健指定医、精神科専門医・指導医 日本医師会認定産業医。
病気の解説やその分野のトップレベルのドクターを紹介するWebサイト「ドクターズガイド」を運営。