「成人男性がおたふく風邪にかかると男性不妊になる」という噂は本当?
流行性耳下腺炎(ムンプス)、俗に言うおたふく風邪も、風疹、はしかと同じく春先に流行する。おたふく風邪は、唾液をつくる耳下腺(耳の前~下)や、あごの下の顎下腺がはれて痛む発熱性の急性ウイルス性疾患。合併症の精巣炎が有名で、「大人になってからおたふく風邪にかかった男性には、子どもができない」という説は、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。これは実際どうなのか、國松氏に聞いてみた。
「この説は強調されすぎているきらいがあるように思います。確かに、合併症としては精巣炎が知られますが、おたふく風邪にかかったから100%不妊になるわけではありません。あくまで両方の精巣に炎症が波及して、かつ炎症が著しい場合です。炎症の程度が弱ければ、精巣炎になったとしても問題はないはずです」。どうやら、世間で言われているほど、「おたふく風邪=男性不妊」に一直線に進む訳ではないようだ。しかし、感染してから不妊を心配する可能性を考えれば、ワクチンを接種しておいた方がよいだろう。
ワクチン接種や就業制限は、企業のリスクマネジメントの1つ

風疹、はしか、おたふく風邪を予防する唯一の手段は、ワクチンの接種だ。いつ接種すればいいのか?との質問に対し、「これらの感染症を予防するためのワクチンは、今から打っても遅くありません。打とうと思った時がタイミングです」と國松氏は語る。しかし、なかなか「今でしょ!」と踏み切れない人が多いのは、費用の問題もあるだろう。
本来は血液検査で抗体の有無を調べてからワクチンを接種するのが正しい手順だが、検査には費用がかかる上、ワクチンの費用も自己負担だ(*1)。検査して、結果を聞いて、接種して…のプロセスを踏む時間を取られることも、ワクチン接種のモチベーションを下げる要因だろう。ワクチンを接種したかどうかの記憶が怪しいなら、母子手帳で確認するか、表2でチェックしてみよう。
生年月日・性別 | ワクチン接種状況 | 注意点 |
1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日生まれの男性 | 中学生の女子のみ、学校で1回の集団予防接種 | 男性は対象ではなかったため抗体を持たない。女性も1回だけの接種では回数として不十分であり、感染する恐れがある |
1979(昭和54)年4月2日~1987(昭和62)年10月1日生まれの男女 | 中学生の男女に対し、1回の個別接種 | 上記同様、1回だけの接種では回数として不十分で、感染する恐れがある |
1987(昭和62)年10月2日~1990(平成2)年4月1日生まれの男女 | 幼児期の男女に対し、1回の個別接種 |
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