インフルエンザの流行がほぼ終息し、ほっとしたのもつかの間、春には春の感染症が流行し始める。風疹、はしか(麻疹)、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、主に春に子どもの間で流行する病気だが、大人がかかると重症になりやすく、中でも働き盛りの男性に多い風疹は周囲の妊婦への感染に注意が必要だ。春の感染症の怖さと、働き盛りの世代に与える影響について、国立国際医療研究センター病院総合診療科の國松淳和氏にお話を聞いた。
春に流行しやすいのは、風疹、はしか、おたふく風邪
国立国際医療研究センター病院の國松淳和氏が診療を行う総合診療科には、「私はいったい何の病気なんだろう?」とすっきりとしない悩みを抱えた患者さんがやってくる。たとえば、発疹一つとっても、薬剤のアレルギーかもしれないし、感染症かもしれない、そんなはっきりしない症状を見抜いてくれる、駆け込み寺のような診療科だ。
國松氏によれば、晩冬から春にかけては、風疹、はしか、おたふく風邪などの感染症(表1)が増える傾向があるという。「風邪、高血圧、膀胱炎…とさまざまな病気の方を診る中で、春になるとこれらの感染症が出てくると感じます。年間を通してポツポツ散発していますし、毎年大流行になる程ではないだけに、見極めるのが困難です」。
インフルエンザは、乾燥しやすい冬がハイシーズンだが、風疹・はしか・おたふく風邪はなぜ春に流行するのだろうか。國松氏は、この現象は社会情勢を反映しているのではないかと語る。「3つのウイルスをまとめて語るのは難しいですが、日本では、新入社員や新入生など、多くの人が新しい環境に入るのが春です。人が大きく動く春は、ウイルスの抗体を持たず、抵抗力の弱い“丸腰の人”が、新しい環境で感染症にかかる可能性をはらむ季節でもあります」。
病名 | 風疹 | 麻疹 | 流行性耳下腺炎(ムンプス) |
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俗称 | 3日はしか | はしか | おたふく風邪 |
症状 | 発熱、発疹(額や顔から全身に広がる)、耳の後ろのリンパ節が腫れる | 発熱、鼻汁、目やに、全身の発疹、口の内の白い発疹(コプリック斑という) | 耳の下(耳下腺)や顎の下(顎下腺)がぷっくりと腫れる、頭痛、発熱 |
感染経路 | 飛沫感染、接触感染 | 空気感染、飛沫感染、接触感染 | 飛沫感染、接触感染 |
潜伏期間 | 4~21 日 | 10~12 日 | 14~24 日 |
学校保健法が定める出席停止期間 | 発疹が消えるまで | 熱が下がって3日を経過するまで | 耳下・顎下の腫れが出てから5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで |
合併症 | 髄膜炎、突発性血小板減少性紫斑病 | 肺炎、髄膜炎、脳炎 | 精巣炎・卵 巣炎、髄膜炎、聴力障害 |
ワクチンの費用(*) | 風疹・麻疹の混合ワクチンが8000~10000円程度 | 5000~8000円程度 |
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