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季節の病気を上手に防ぐ

睡眠薬って怖くない? ~悩ましい不眠への対処法~

新しいメカニズムの薬も登場、上手に使って「寝る力」を取り戻そう

  田中美香=医療ジャーナリスト

睡眠薬へのネガティブなイメージを捨てよう

睡眠薬は正しく使えばあなたの味方。(©stpure / PIXTA)

 1950~60年代に多用された睡眠薬バルビツレートは麻酔薬の一つで、安全性に問題があり、自殺に使われたことで知られる。今でも「睡眠薬は死に至る危険な薬」というイメージを引きずる人が多いのはこの薬のせいだろう。これに対し、現在の睡眠薬は安全性が高まっている、と林田氏は語る。「睡眠薬を飲んだら認知症になる、朝起きられなくなる、という噂が先行していますが、誤った認識は捨てるべきです。適正に使えば安全なのに、誤った使い方をするから不眠がこじれるのです」。

 たとえば、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の場合、急にやめるとリバウンドを起こしやすいため、「一晩飲んで効いたから今夜はやめよう」と自己判断でやめるとかえって眠れなくなってしまう。そうなると、「薬のせいで不眠が悪化した」「やはり睡眠薬は癖になるんだ」と、悪い方に考える認知パターンに陥っていく。本来、薬物療法のゴールは、薬なしで眠れるようになることにある。睡眠薬を飲み始めたら、決して焦らず、まずは薬で眠れるようになってから、医師と相談してゆっくり減らしていくのが理想だ。

 ちなみに、睡眠薬が原因で認知症になるかどうか、医学的な結論はまだ出ていない。しかし、不眠からうつ病になったり、血圧や血糖が上がる可能性があることを考えれば、不眠を放置しておくことも考えものだ。睡眠薬を短期間使ってきちんと眠るほうが心身ともに楽だとすれば、睡眠薬の力を借りるのは悪いことではないだろう。

手軽に購入できる「睡眠改善薬」の使い方

 不眠に効果がある薬には、薬局で手に入るものもある。「睡眠改善薬」と呼ばれる薬だが、病院で処方される睡眠薬とはどう違うのだろうか。

 「鼻炎や風邪、花粉症の治療に、抗ヒスタミン薬がよく用いられます。種明かしをすると、その第一世代にあたるジフェンヒドラミン塩酸塩が、睡眠改善薬の成分にあたります。眠くなるという副作用を逆手にとったものです。薬局で購入できるという利便性がありがたい薬ですが、使用時は注意が必要な薬でもあります」(林田氏)。

 注意すべきは、添付文書にある「連用しない」「不眠症の診断を受けた人は服用しない」という2点。忙しい時、一時的に眠れない時に限って使用する程度にとどめたい。長く眠れないなら、医師に相談して不眠の原因を探り、見合った薬を処方してもらおう。

どうすれば良い眠りを得られる?

 いざ寝ようと思っても、“1、2、の3”では寝つけないもの。良い眠りを得る「寝る力」が簡単に手に入ればよいが、林田氏によると、寝る力を鍛えることは困難だという。「例えば0点の人が寝る力を鍛えても、10点満点の眠りを得ることはできません。快適な睡眠が得られなくなる、その下がる度合いをいかに減らして10点に近づけるかがカギです。フィギュアスケートと同じで、減点方式のイメージです」。

 林田氏のアドバイスを下にまとめてみた(表2)。就寝前の生活習慣を見直し、質・量ともに気持ち良く眠れる春を過ごそう。

表2 良い眠りを得るためにしたい10のこと
お酒に頼らない日本人は睡眠薬より寝酒を選ぶ傾向がある。酔うと寝つきが良くなるが、4~5時間でアルコールが分解されて血中濃度が下がると目が覚め、「中途覚醒」になりやすい。アルコールの力で眠ると夢ばかり見て、尿意で起きることも多い。酒量が増えて依存症になるリスクもある。寝れない時こそお酒に頼らないほうがよい
カフェインを飲むなら早い時間にカフェインは4~5時間覚醒効果が続くので、夜の飲み物はノンカフェインが良い。コーヒーだけでなく、緑茶や紅茶、コーラ、チョコレートも注意しよう。また、寝不足で眠い昼間にカフェイン入りドリンク剤を飲むと、胃が荒れたり、切れてイライラしたり手が震えたりする「カフェイン依存症」になる可能性があり、常用は避けたい
ぬるめの風呂でリラックスするお風呂の温度については諸説あるが、一般的に熱い温度での入浴は避けたほうがよい
軽い運動をする夕食後、20~30分のウォーキングや軽いジョギングで体を動かすことがおすすめ。ただし、眠りにつくには、体温が下がることが大切。寝る直前に筋トレのようなハードな運動をすると頭が冴え、体温が上がって寝つきが悪くなる
就寝前に目が冴える作業をしない覚醒状態から睡眠状態に移行するには、リラックスする時間が必要。パソコンを使った作業や仕事、勉強は神経が覚醒に傾き、不眠になりやすい
寝つけない時は布団から出る布団の中で長時間モゾモゾするのはNGの行動パターン。布団=眠れない場所という負の条件反射がつく前に、布団から出て一息つこう
夜は照明をコントロールする体温が上がっていく朝に強い光を浴びると早寝早起きになるが、体温が落ちていく夜に浴びると遅寝遅起きになる
自分なりの入眠儀式をつくる寝る前の行動パターンを一定にする入眠儀式を持つことがオススメ。条件反射を利用して心身をクールダウンさせよう
寝る前にタバコを吸わないニコチンには精神刺激作用があるので、目が冴えてしまう。就寝前の喫煙は避けたい
空腹のまま寝ないお腹がすくと夜中に目が覚めることがあるので、空腹の状態で布団に入らないこと。遅い時間に軽く食べるなら、胃がもたれない、脂っこくないものがよい
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン(2013年)と林田氏への取材を基に構成
林田健一(はやしだけんいち)さん
スリープ&ストレス クリニック院長
林田健一(はやしだけんいち)さん

医学博士、日本睡眠学会評議員。1996年東京慈恵会医科大学卒業。同精神医学講座、神経研究所附属睡眠学センターにて、睡眠時無呼吸症候群、不眠症、時差ぼけ、ナルコレプシーなどに関する臨床研究を行い、2007年スリープ&ストレス クリニック開設。睡眠障害の専門治療に幅広く取り組み、メディアや講演を通じて睡眠医療の啓発にも多数携わる。
著書に『どう診る?日常診療に潜む睡眠障害』(日本医事新報社)、『朝、スッキリ目覚め「いい眠りだったな」とつい言ってしまう本』(主婦の友社)など

編集協力:ソーシャライズ
病気の解説やその分野のトップレベルのドクターを紹介するWebサイト「ドクターズガイド」を運営。

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