3月18日は「春の睡眠の日」。これは、世界睡眠医学協会が定める世界睡眠デー(World Sleep Day)に合わせて、日本睡眠学会・睡眠健康推進機構が制定したものだ。「春だから眠くて遅刻しちゃいました」と言い訳したくなる春、睡眠障害の治療に詳しいスリープ&ストレスクリニック(東京都品川区)院長の林田健一氏に、さまざまな眠りの障害について聞いた。
「春だから眠い」の言い訳はアリ?

「春眠、暁を覚えず」の言葉通り、春になるとぽかぽか陽気が眠りを誘うというのが通説だ。それでは、病的な過眠も春に起きやすいのだろうか。
昼間に眠くなる病気といえば、睡眠時無呼吸症候群が有名である。睡眠時無呼吸症候群は、夜間、寝ている間に気道の閉塞によって無呼吸の状態が頻繁に生じ、睡眠が障害されるために、日中の眠気などさまざまな症状が現れる疾患だ。かつては「仕事中に眠いなんて、気が緩んでいる証拠だ」と怒られたものだが、2003年、運転手の睡眠時無呼吸症候群が原因で起きた山陽新幹線の事故を機に、眠くなる病気の存在が広く知られるようになった。睡眠時無呼吸症候群は、就寝中に大いびきをかいて息が止まる、昼間居眠りをする、などの状態が続く。年齢に比例して増え、中でもメタボリック・シンドロームの男性に顕著だ。
林田氏は、「春は心地いいから眠りやすいというのは確かです。しかし、春のせいで病的な過眠が増えるとは言えないかもしれません。睡眠時無呼吸症候群も、特に春に多いものではありません」と述べる。どうやら、「春だから寝坊した」は言い訳にならないようだ。
働き盛り世代に多い「睡眠不足症候群」など、睡眠障害にはさまざまなタイプが
昼間の眠気の多くは、夜きちんと眠れていない結果として生じている。その原因として最も多い寝不足は、「睡眠不足症候群」と呼ばれ、社会人や学生など、時間に追われやすい世代によく見られる。「“会議で居眠りして上司に怒られる”と嘆く人に聞くと、平日の睡眠時間が4~5時間で、週末に寝だめして月曜日を迎えるサイクルを繰り返しています。今の若者や働き盛りの人は、忙しいから寝ていない、だから眠くなる、という充電不足の傾向にあります」(林田氏)。
また、夜型の生活を送ってきた人が就職した時など、早朝に起床して定刻に出勤するリズムに適応できないことがある。これは「概日リズム睡眠障害」(体内時計のリズムの乱れに基づく睡眠障害)の一つ、睡眠相後退症候群だ。林田氏によれば、睡眠相後退症候群の人たちは、「眠れない」わけではなく、「眠る時間帯がズレている」ことが問題なのだという。
「これはいわば時差ボケの状態が続くようなものです。睡眠相後退症候群の人たちは、0時に寝て7時に起きる、といったサイクルで眠ることは大変でも、明け方から昼までというように、時間をずらせば無理なく眠れます。こういった場合、睡眠リズムを直すアプローチが必要です」。
その他にも、頻繁に激しい眠気に襲われる「ナルコレプシー」、夜間に脚がむずむずする異常感覚があらわれ、気になって眠れない「むずむず脚症候群」…など、眠い病気・眠れない病気は数多く存在する。眠りの問題は、今や誰にでも起こりうる身近な問題になっているのだ。
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