日本人の死亡原因は、1位がん、2位心疾患、3位脳血管疾患、の3つが不動の地位を保ってきた。だが、このところ肺炎が頭角を現し、2011年には3位にランクインしている。日本呼吸器学会では、2013年から肺炎撲滅を目指す「ストップ肺炎キャンペーン」を展開。しかし、高齢化が災いして、肺炎死亡率は今後さらに高まると予想される。肺炎はどのような原因で起こり、どのような治療が行われるのか、どう予防すればいいのか。公益財団法人結核予防会複十字病院院長の後藤元氏に聞いた。
冬ならではの病気として、真っ先に思い浮かぶのが風邪やインフルエンザだ。これらのウイルス感染によって気道が炎症を起こすと、バリア機能が破壊され、そこを足掛かりとして菌が肺に入り込み、肺胞にまで炎症を広げてしまう(肺炎)。肺炎は古くから存在するが、今ふたたび死亡率が上昇傾向にある、あなどれない病気だ(下図)。
肺炎を引き起こす病原体として、一番多いのは、全体の約3割を占める肺炎球菌。これは身近に存在する細菌の1つで、高齢者や乳幼児のように免疫力が低い人や、病気で体力が下がった場合だけでなく、健常者にも肺炎を引き起こすことがある細菌だ。
肺炎の原因は、他にもたくさんある。下表に示した代表例に加えて、食物や唾液などと一緒に菌が肺に入って起こる誤嚥(ごえん)性肺炎もある。呼吸器感染症を専門とする後藤氏によると、このように多彩な原因を特定することが難しいために、肺炎の治療は一筋縄ではいかないのだという。
細菌性肺炎 | 肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌(*)、レジオネラ菌、緑膿菌などの細菌が原因で起こる |
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非定型肺炎 | マイコプラズマやクラミジアなど、一般的な細菌・ウイルスとは異なる微生物が原因で起こる |
ウイルス性肺炎 | インフルエンザウイルス(*)、RSウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス(はしか)、水痘ウイルス(みずぼうそう)などのウイルスによって起こる |
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