ちょっと危ない? と思ったら、セルフで予防をしよう

うつの根底にあるストレスは、どう解消すればいいのか。
「人に話を聞いてもらうのは一つの方法。米国の女性を対象にした研究では、かかりつけの精神科医を持っている人より、話を聞いてくれる女友達を持っている人の方がうつになりにくい、という結果が出ています」(平島准教授)。
あのときこうしていれば良かった…という「たら・れば」思考でぐるぐる考えながら落ち込みそうになるときは、ぐるぐるを断ち切るメソッドをいくつか持っているといい。例えば、冷たい水で手を洗う、好きなCDを聞く、香りのいいお茶をのむなど、簡単なことでいい。一つやってみて、ダメなら次、というように試していく。
「仕事で出張ばかりという人は、たまには観光旅行に。家で旧作ビデオばかり見ているという人は、映画館で新作を見てみる。負担がかかる大転換ではなく、少しだけチャンネルを変えて楽しみを得るのが上手な気分転換のコツ」(平島准教授)。
また、会社から家に帰る間に、寄り道をすることも、仕事のストレスを置き去りにする点で有効。「元気がある人なら会社帰りにスポーツクラブで汗をかくと能動的な癒やしになる。とてもそんな元気はない、という人はマッサージやエステなど、受動的な癒やしがお薦め」(立川院長)。
セロトニンを活性させるには朝日を浴びるといいが、落ち込んでいるときにはそもそもベッドから出られない人が多い。「防犯面の問題がなければ、カーテンを開けっ放しで寝るといい。起きるころにはいやでも朝日を浴びているので、ベッドから出なくていい」(立川院長)。
友人や同僚がうつになったらどうすればいい?
まずは話を聞いてあげて「苦しかったね」と同調を。基本態度は「甘やかさないけど、優しい言葉」。
「これ以上頑張れない」状態のうつの人に「頑張って」という言葉で励ましてはいけない、ということは常識化しつつある。まずは「つらい」という気持ちを聞いて、吐き出させる。そして「それはつらいね」と、共感して、「一人じゃないから、大丈夫」だと伝えてあげよう。
とはいえ、友人などに長電話で何度も「苦しみ」を聞かされたのでは、聞く側のストレスになってしまう。そういうときは、相手が「拒否されたのではない」と感じるように、優しく、かつきっぱりと断っても大丈夫。
「『あと30分で外出だから、そろそろ切るね。日曜日ならゆっくり話せるけど、どう?』『電話だとあなたの顔が見えないから、都合のいい日にお茶でも飲みながら話さない?』など、代案とセットに」(平島准教授)。
また、甘やかさないことも優しさだ。「うつを理由に遅刻や無断欠勤を許したり、腫れ物に触るように甘やかしてはいけない。優しい言葉と態度で、しかし、きっぱりと、社会のルールを守らせよう」(立川院長)。
双極性障害
昔は「躁うつ病」と呼ばれていたように、気分が高揚する時期と沈む時期が交互に来る。軽い躁状態が「普通」と思われると、うつ病と誤診されやすい。
産後うつ
産後3~6カ月以内に、10~20%の人がなる。エストロゲンが欠乏することでセロトニンの働きが低下する。育児のストレスや睡眠不足も誘因に。
燃え尽き症候群
仕事の繁忙期の後などに精根尽き果ててしまった状態。「報われない」という気持ちが引き金になることも。悪化してうつ病になることもある。
PMDD(月経前不快気分障害)
排卵期から月経前まで、プロゲステロン(黄体ホルモン)が増えるのが原因。イライラしたり、キレやすくなったり、落ち込みやすくなったりする。
(取材・文:竹島由起/イラスト:いいあい)
(出典:日経ヘルス2013年1月号/記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)