一度発症すると、ズキズキ、ガンガンと痛みが続き、何も手に付かなくなることもある片頭痛。前編では、そのつらい痛みのメカニズムと、痛みの発症に女性ホルモンが関係することを紹介しました。後編では、片頭痛の治療と今年登場した話題の新薬、発症や痛みを抑えるセルフケア法を紹介していきます。

痛みを抑える治療薬、発症を抑える予防薬
片頭痛に使う薬は大きく分けて2種類。症状が出てから使う治療薬と、発症そのものをおさえる予防薬だ。
治療薬には、痛みを抑える鎮痛薬と、過剰に広がった血管を収縮させるトリプタン製剤やエルゴタミン製剤がある。急な痛みの対応には、市販の鎮痛薬を使うという人が多いかもしれないが、使い方には注意が必要だ。
「鎮痛薬は、痛みを抑えるのに使用するのはかまわないのですが、痛みに対する不安感から痛みが出る前の予兆の段階で薬をのむのはNGです。鎮痛薬の乱用はかえって頭痛を引き起こす可能性があります。頭痛外来の受診者のほとんどは片頭痛による相談ですが、頭痛日数が増えたからと来院したら、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)だったというケースが増えています」と富士通クリニック頭痛外来の五十嵐久佳医師が注意を促す。
痛み始めにのむと効きがいい
片頭痛治療薬
●痛みそのものを抑える鎮痛薬
頭痛の痛みや諸症状を抑える薬。片頭痛の場合、痛み始めたらなるべく早く服用することが効きを良くするポイント。ただし頻回に使うと難治性である薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を招きやすい。
●血管を収縮させるトリプタン製剤、エルゴタミン製剤
痛みのピークを抑える作用をもつ発作頓挫薬。痛み始めにのむものだが、タイミングが早すぎても遅すぎても効かず、人によってはまったく効かない場合も。鎮痛薬同様、頻回になると薬物乱用頭痛になる恐れあり。
一方、予防薬には、主に血管拡張を抑える薬が用いられる。これまでは、Ca(カルシウム)拮抗薬や抗てんかん薬、β(ベータ)遮断薬といったものが使われてきたが、今年に入って、血管を拡張する神経伝達物質の働きを阻害する新薬が続々と登場している。
血管の拡張を抑え発症を防ぐ
片頭痛予防薬
新薬以外ではCa(カルシウム)拮抗薬、抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬、漢方薬などがあり、すべてのみ薬。抗てんかん薬は妊婦への投与不可。血管の異常な拡張を抑えたり、CGRPの放出に関係する神経伝達物質セロトニンの働きを安定させたりするなどの作用をもつ。
次ページでは、従来の予防薬に比べ格段に片頭痛の発症を抑えると期待を集める新たに登場した片頭痛予防薬について詳しく紹介していこう。