【胃食道逆流症】食べ過ぎ、寝る前の食事で、胃の入り口の筋肉が緩み、胃酸が逆流
胸が焼けるように熱い、酸っぱいものがこみ上げてくることが多い…。そんな症状が週2回以上あったら胃食道逆流症の危険性大だ。「胃食道逆流症は胃酸が逆流することで食道がただれ、炎症が起きる病気。逆流性食道炎とも呼ばれる。炎症がない人でも、逆流を繰り返すことで胃酸を戻す食道の力が弱まり、胸焼けなどの症状が起きやすい」と日本医科大学消化器・肝臓内科の岩切勝彦教授。
症状:胸焼けや胸痛、げっぷでムカムカする
典型的な症状は、食後の胸焼け、げっぷと共に酸っぱい水や苦い水がこみあげてくる胃酸の逆流だ。強い胸痛で仕事もできなくなる人もいる。
「食道に炎症が起こるのは、食道粘膜には強い塩酸を含む胃酸に対する防御機能がないため。本来は、胃酸の逆流が起こっても、食道のぜん動運動で、すぐに逆流した胃液や食べ物を胃へ戻すが、胃食道逆流症の人はぜん動運動がうまく働かなくなっていることが多い」と岩切教授は指摘する。
胃食道逆流症になるのは、暴飲暴食、就寝前の食事により、胃の入り口で逆流を防ぐ下部括約筋が一時的に緩むことが原因。太っている男性がなりやすいといわれるが、やせていても、女性でもだれでもなりえる。

診断には内視鏡検査が必須だが、症状を訴える人の約7割は炎症のない非びらん性胃食道逆流症(NERD)。(データ:日本医科大学千葉北総病院消化器内科)
治療:H2ブロッカー無効ならプロトンポンプ阻害薬
治療は胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用が有効。「市販のH2ブロッカーは日中の酸分泌を抑える力が弱く、効果がないことが多い。昼夜を問わず胃酸分泌を抑えるPPIの服用で、ほとんどの人は症状が改善する。炎症を放置すると、食道が胃の粘膜と似た状態に変化する“バレット食道”になり、発がんリスクが高まるので要注意」(岩切教授)。
まれだが、PPIの効果がなく、食道の筋肉が厚くなって食道運動異常が起きているケースでは手術が有効なこともある。
セルフケア:寝る前3時間の食事はNG。便秘も解消を
暴飲暴食や早食いをやめ、就寝前3時間は食べないようにしただけで、症状が消える人もいる。「便秘だと胃が圧迫され、逆流しやすいので便通改善も重要。知覚過敏で痛みを感じやすくなってしまった人は、ストレス軽減も大切」と岩切教授。
(取材・文:福島安紀/イラスト:いいあい、三弓素青)
(出典:日経ヘルス2013年12月号/記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)