【微小血管狭心症】更年期女性に多発、命にかかわらないが診断つかず適切な治療が受けられない人も
安静にしていても胸が締め付けられるように痛むことがある、痛みは水を飲んでも治まらない、月経は不順…。そんな人は微小血管狭心症の恐れがある。「閉経前の女性は、血管を広げる作用があるエストロゲンに守られており、狭心症や心筋梗塞にはなりにくい。ところが、30代後半から50代後半にかけて、10人に1人程度の女性が胸痛発作を経験している」と静風荘病院女性内科・女性外来の天野恵子医師は話す。
症状:エストロゲンの乱れが原因。圧倒的に女性に多い
微小血管狭心症は、心臓の血管である冠動脈の中でも太い血管ではなく、非常に細い血管が収縮し、胸痛発作が起きる病気だ。月経不順や更年期のエストロゲンの急激な低下、冷え、ストレスなど女性ホルモンが乱れる状態が引き金になる。
「普通の狭心症と同じように、胸のあたりが象に踏みつけられたように強い痛みを感じ、胸痛が半日、あるいは1日中続く人もいる。ただ、心臓の専門家でも、この病気に詳しくない医師もまだ多い。さらに一般の心臓の検査では分からないくらい微小な血管の収縮が原因なので、胸痛で苦しんでいるのに、『異常なし』『心臓神経症』などと診断され、うつ状態になる人も。不安で外出や仕事ができなくなる人もいるので、女性の心臓病に詳しい循環器内科で適切な治療を受けてほしい」と天野医師は強調する。
こんな病気でないことをまず確認
微小血管狭心症と診断するためには、胸痛発作の起こるほかの病気との鑑別も重要。中には、胃食道逆流症を併発している人も。
気胸:特に原因もないのに肺の一部に穴が開き、空気が漏れて胸が痛む。女性は月経の前後に発症することも。胸部X線検査で診断がつき、ほとんどは自然に治る。
心膜炎:インフルエンザやカゼなどのウイルスが原因で心臓を包む心膜に炎症が起こり、水がたまる病気。胸部X線検査などで診断し、治療は原因となった病気によって異なる。
肋間神経痛:体の片側の肋骨に沿って起こる突発的な痛み。原因は不明なことが多い。
胃食道逆流症:4ページ参照
治療:脈をゆっくりにするカルシウム拮抗薬が有効
微小血管狭心症は一般的な狭心症の治療薬であるニトログリセリンが効きにくい。治療は、塩酸ジルチアゼムなど、血管拡張作用があり、脈を遅くするタイプのカルシウム拮抗薬が第一選択だ。「薬の服用で、ほとんどの人はすぐに胸痛発作が治まる。また、ホルモン補充療法が効果的な場合も。微小血管狭心症自体は命にかかわる病気ではない」と天野医師は話す。
セルフケア:月経を整えるストレスを減らす生活を
月経不順によって10代、20代でも微小血管狭心症を発症する場合がある。「急激なダイエットや過労が月経不順の原因になっている人はまずは生活の見直しを。胸痛発作の引き金となる冷えや睡眠不足をなくし、ストレスとうまく付き合うことも大切です」(天野医師)。
そんな人は「更年期の梅核気(ばいかくき)」かも
内視鏡検査で異常はないのに、のどに梅の実のようなものが詰まっている感じがして息苦しく、飲み込むことも吐くこともできない―。これは更年期の女性に多く見られる梅核気という症状で、ヒステリー球、咽喉頭異常感症とも呼ばれる。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という漢方薬が効きます。
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