【乳がんの基礎知識】
かかりやすいが、“治しやすい”がん 発症・再発のリスクは年をとっても続く
女性がかかるがんで最も多いのが、乳がん。この30年間で約4倍に増え、日本人女性の11人に1人が発症している。30代後半から増え始め、ピークは60代、次に多いのが40代だ。70代以降での発症も少なくない。

「罹患数は1位だが、死亡率は5位と、他のがんに比べて予後がいいのが乳がんの特徴。ただし手術後10年くらいは再発の可能性が消えないので、他のがんよりも長い経過観察が必要」と昭和大学医学部乳腺外科の中村清吾教授は話す。

乳がんは、乳房の中にある乳腺にできるがんだ。発症には女性ホルモンのエストロゲンの影響が大きく、初潮が早い(11歳以下)、閉経が遅い(55歳以上)、初産年齢が遅い、出産・授乳経験がないなどが、発症リスクを高める。「つまり、月経回数が多く、エストロゲンにさらされる期間が長いほどリスクが上がる」と中村教授。なお、閉経すると卵巣からのエストロゲンの分泌は止まるが、脂肪からエストロゲンが作られるので、閉経後の肥満には要注意。閉経前でも、BMIが大きいほどリスクが上がるとの報告がある。

また、食事や生活習慣も乳がん発症との関係が指摘されている。「発症リスクを上げるのは、飲酒や喫煙、夜更かしなど。逆に大豆食品の摂取や運動は発症予防に働く」と亀田総合病院乳腺科の福間英祐主任部長。
コラム
ハイリスクの「遺伝性乳がん」も
親子、姉妹などの近親者に乳がん経験者がいる場合も発症リスクが高まる。もし40歳未満で乳がんや卵巣がんになった近親者がいるなら、乳がんに関係する遺伝子に異常がある「遺伝性乳がん」の可能性も。「乳がん全体の5~10%と数は多くないが、そうでない人より発症リスクが6~12倍高くなり、発症年齢も早まる。可能性のある人はできれば遺伝カウンセリングと遺伝学的検査を受けて」と中村教授。
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