切らずに治せて術後もラク 痛みの少ない“日帰り”の根治法も
薬で症状を抑えられない痔は、外科治療の対象になる。とはいえ、必ずしも切る必要はない。
例えば内痔核。「あまり大きくなく軟らかい内痔核は根元をゴムで縛って壊死させる『ゴム輪結紮(けっさつ)』。脱出する大きな内痔核は、薬剤を注射して縮小させる『ALTA』で、根治に近い効果が得られる」(山口院長)。
ただし、ゴム輪結紮やALTAは外痔核には使えないため、「内痔核と外痔核がひとかたまりになっている場合は、外痔核を歯状線の少し上まで、止血効果が高く傷跡もきれいな超音波メスで切るか、糸で分割して縛る方法を併用する」と野村院長。
術後の痛みは少なく、受けた翌日から普段の生活に戻れる。
ALTAを行うと内痔核の縮小につれ外痔核が引き上げられるので、その効果を見てから外痔核の切除を決める手もある。
切れ痔の手術は、肛門が狭まり排便後の痛みが持続する場合が対象。主に関西地方で普及している日帰り手術として「振り分け結紮」がある。「炎症で硬くなった組織を糸で縛って壊死させ、新しい組織を出す方法。潰瘍化した切れ痔の傷が治りやすくなる」と野村院長。
あな痔の手術は瘻管(ろうかん)のある部位により異なるが、野村院長によると、瘻管が括約筋の間を下に伸びる最も一般的なあな痔は、すべて「シートン法による日帰りの根治手術が可能」という。
瘻管に細いゴムひもを通し体の外で結ぶ方法で、ゴムひもを異物と見なし排除しようとする体の働きで、ゴムひもの上のほうから組織修復が促されるとともに、下側の組織が徐々に切り離されていく。「化膿菌の温床になる血液や滲出液(しんしゅつえき)を体の外に出すことも同時に行えるのが優れた点」(野村院長)。一定の間隔で通院し、ゴムひもを締める必要があるが、その間、ゴムの違和感などは特にないという。
(取材・文:小林真美子/イラスト:いいあい、三弓素青)
(出典:日経ヘルス2015年3月号/記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)