生来の“脳の特性”による発達障害。周りとの違いが際立つ場合には小児期に発覚することが多いのですが、第1回で紹介したように、大人になってから初めて発達障害だったと気づくこともあります。この回では、大人になってから見つかることも多いASDとADHDのそれぞれの特徴について紹介します。

生まれついての脳の特性による発達障害。その中でも大人になってから発覚することが多いのはASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)だという。どのような特徴があるのか、それぞれについて詳しく見ていこう。
【ASD(自閉スペクトラム症)】
こだわりが強く、空気が読めない“コミュ障”タイプ
ASD の特徴
- 自分の気持ちや考えを表すのが苦手
- 冗談を真に受ける
- 興味のあることは一方的に話すなど自己中心的で、こだわりが強い
- 要領が悪い、頑固といわれることがある
- 突発的なことに臨機応変な対応ができない
- 規則やルールにこだわる
長所
- 関心のあることには集中力を発揮する
- 筋道をたてた論理的な思考ができる
- 正直で正義感が強い
ASDの名前にある「スペクトラム」とは連続体のこと。以前は、「自閉症」や「アスペルガー症候群」といわれていたものだが、ある程度共通点があり連続性が見られることから、近年はまとめてASDと呼ばれている。
ASDの主な特徴が、「コミュニケーションが苦手」「こだわりが強い」という点。話すときに人と目を合わせられなかったり、あいまいな指示だと意図をうまく理解できないといったことが原因で、相手を怒らせてしまうなどのトラブルになることもあるものの、本人は意図してないため、トラブル状態に困惑したり孤立感を抱くことが少なくない。
一方、自分が興味のあることには集中力を発揮し、深い知識を持つことが多い。正直で正義感が強いといった長所もあるが、そこがかえってかたくなで融通が利かないと思われることも。

長年、ASDと神経系の関係について研究を行ってきた国立障害者リハビリテーションセンター研究所の和田真室長は、ASDの原因が生後数年間の脳神経系の変化の有無に関係するのではないかという。「神経系は、生後数年の間にネットワークの刈り込みが行われ、機能が最適化することがわかっているのですが、この過程が不十分で、情報伝達や処理が独特になることがASDの原因ではないかという仮説が、近年有力視されています」という。
また、「発達障害の中でも、特にASDは “抑制性”と“興奮性”の神経バランスに乱れがあるとする説もあります。実は、ASDにてんかんが併発することも多いのですが、てんかんは、興奮性の神経が優位にたつことで起こることが知られています」(和田室長)。